院内情報誌「ぷらなす」2022年9月発行(Vol.32)
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江田記念病院院長伊澤寛志江田記念病院は内科、精神科、リハビリテーション科の職員が多いという特色を生かした病院として機能しています。それぞれの診療科による違いを認めつつ、医療安全・感染対策・といった組織横断的テーマへの対応についても取り組み続けています。このような当院において、今まで十分な活動実績の乏しかった倫理面への取り組みについて、2022年の病院のスローガンを「対話の医療」として掲げ、現在積極的に取り組みつつあります。医療を行うにあたって、科学的根拠に基づいた医療の実践が重要であることは、1990年代より繰り返し言及されてきていました。臨床研究に基づくガイドラインが増え、その内容に沿って医療を検討し、実践する機会も確実に増えつつあります。しかし、個々の患者さんの診療でガイドラインを機械的に当てはめて考えさえすればよいのではなく、個別性に配慮した実践が求められています。故日野原重明先生は、医療には科学的思考と価値的思考が重要である旨を著書の中で指摘されていました。医療において患者・家族・病院職員との協力が不可欠である一方で、それぞれが一人の人間である以上、何らかの価値観を持ち合わせた存在でもあり、時に価値観同士の葛藤が生じることもしばしばです。科学的事実からだけでは価値観は導き出せず、臨床研究に基づいたガイドラインから個人の価値観までも導き出すことはできないからです。そのような葛藤が生じた中でも、患者・家族との話し合いの繰り返しや、多職種を交えた検討を通してそれぞれの価値観を出し合い、「対話」を通して解決を図っていこうというのが、「対話の医療」の意味するものです。医療を受けられる方も病院職員も、病院を利用し続けていても悩みは尽きないかもしれません。しかし、それでよいのです。なぜなら、問題が起こるのが人間の人生だからです。さあ皆さん、「対話」を重ねながら、一緒に悩んでいきましょう。2それぞれの価値観を出し合い、「対話」を通して解決を図っていこうというのが、「対話の医療」の意味するものです。病院長よりご挨拶

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