脳梗塞による麻痺が右半身にあり︑通所でリハビリに励んでおられた利用者さま︒普段はひとり暮らしのため︑月に一度妹さんがご自宅を訪れて身の回りのお手伝いをしてくれるそうです︒特に指の麻痺が強く︑爪切りなど細かい動作が困難だったので︑妹さんが来てくれた際に毎回爪切りをお願いしていました︒しかし︑利用者さまは妹さんの手を煩わせてしまう申し訳なさや︑衛生的にも頼みづらいという思いが大きなストレスになっていたようです︒ そこで︑少しでも心理的負担を軽減するために試行錯誤の上︑手のひらを乗せると重みで爪が切れる自助具を作成し︑何度も繰り返し訓練を重ねました︒すると︑1か月ほど経つ頃にご自身で爪が切れるようになり︑ご自宅でも自分のタイミングで爪が切れるようになりました︒ 妹さんにとって利用者さまの爪切りが負担になっていたかどうかは不明ですが︑利用者さまは妹さんが来てくれるたびに爪切りを頼んでしまう申し訳なさから解放され︑以前より妹さんが来てくれることが楽しみになったとおっしゃっていました︒爪切り自体は日常生活の中の小さな身体的動作ですが︑それを克服することで自分のタイミングで爪切りを行えるようになった喜びや迷惑をかけなくてすむという安心感が生まれ︑こころのリハビリにもつながったと実感できた出来事でした︒西仙台病院リハビリテーション科のスタッフが、日々の業務のなかで特に心に残ったエピソードを紹介していきます思い出に残るリハビリ「爪切りとこころのリハビリ」爪
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