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消化器内科 肝臓病について

はじめに

肝臓病の中でも肝細胞がんはやっかいな病気であり、日本では年間約3万人の死亡者がいます。
肝細胞がんは他臓器のがんと異なり、基礎疾患として慢性の肝臓病を有することが多く、長期に“肝細胞の破壊・再生を繰り返すこと”が肝がん発がんの大きな原因とされています。
すなわち、慢性の肝臓病を早い段階で診断して、適切な治療を受ければ肝細胞がんを未然にふせぐことが出来ます。
また、肝細胞がんになったとしても、現在では次々と最先端の治療が開発されており、やっかいな病気ではありますが、恐れることはありません。
肝がんの患者様はもとより慢性期・急性期の肝臓病の患者様に少しでも高いレベルの医療が提供できるように全力で診療させて頂きたいと思います。
それでは、肝臓病についての解説や当院での治療に関してご紹介させていただきます。

肝臓とは

肝臓は人間の生命の維持に必要不可欠であり、主に次の3つの働きをしています。

1)代謝:三大栄養素である炭水化物(糖質)・脂肪(脂質)・たんぱく質の代謝・貯蔵
2)解毒・排泄:アルコール、薬の成分、有害物質、体内の老廃物などの分解・排泄
3)胆汁の分泌:脂肪の消化に必要な胆汁の生成・分泌

肝炎になると、肝臓の細胞が破壊され、肝臓がうまく機能しなくなります。 しかし肝臓は、悪い部分が生じても他の部分がその機能を補うことのできる“予備能力”が大変優れているため、重症化するまでなかなか自覚症状があらわれないことが多く、“沈黙の臓器”と呼ばれています。 それゆえ、病気が存在しても気づかれないことが多く、症状が出現したときには病気がかなり進行していることがあります。 受診される動機としては健診などで肝機能障害を指摘されたり、肝炎ウイルス検査で異常を指摘されたりして受診されることが多いです。

肝臓

肝機能障害を指摘されたら

肝機能障害をきたす原因はウイルス性、アルコール性、自己免疫性、薬剤性、糖尿病、肥満、代謝性などがあります。 いずれの原因においても治療をせずに放っておいたら肝炎、肝硬変、肝がんへと進行していく危険性が高くなります。 当院では肝機能障害を指摘された患者様の原因を精査し、患者様の年齢、自然経過、効果、副作用を十分に考慮したうえでそれぞれの病気の状態に対応した治療を提供できるよう心がけていきます。

肝炎ウイルス検査で異常を指摘されたら

わが国ではB型・C型肝炎ウイルス感染が原因で生じる肝がん(肝細胞がん)が90%を占めています。 したがって、肝炎ウイルスに感染した人は肝がんになる確率が高く、慎重に画像検査、採血検査などで肝がんが発生しても早期の段階で発見することが重要です。 また、肝炎の状態が持続して肝硬変に近づくほど発癌率が上昇します。したがって、肝炎が解った段階で治療を行い、肝炎の勢いを弱めることが発癌予防になります。
B型肝炎の抗ウイルス療法はインターフェロン(IFN)療法、エンテカビル治療、ラミブジン治療、ラミブジン+アデホビル治療などがあります。 C型肝炎の抗ウイルス療法には、IFN とリバビリンの併用、ペグIFN、プロテアーゼ阻害薬(テラプレビル、シメプレビル)などが用いられています。現在は内服のみでウイルス排除が可能な新しい治療薬の開発も進められています。
当院では積極的に抗ウイルス治療を取り入れて発癌抑制に取り組むと同時に定期的な画像検査、採血検査などで万が一、発癌したとしても早期発見できるような体制を組んでいます。
次にB型、C型肝炎に対する治療の実際に関して説明していきます。

B型肝炎に対する治療

B型肝炎の治療は、ウイルス排除を目指す、抗ウイルス療法(インターフェロン(IFN)療法、エンテカビル治療、ラミブジン治療、ラミブジン+アデホビル治療)、や肝臓を守る、肝庇護療法などがあります。
急性肝炎の場合は、一般に肝庇護療法により、ほとんどの人は治癒しますが、まれに劇症肝炎に発展し、集中治療や肝移植などをしなくてはならないことがあり、注意が必要です。
慢性肝炎の治療は治療をしなくても自然に肝炎が沈静化することがあるので必ずしもすぐに治療を始めなければならないというわけではありません。 また、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能であり、治療の目的はウイルスの増殖を抑制することとなります。治療開始の判断は、年齢(35歳を境目とする)、ウイルス量、炎症や線維化の程度などを評価し、決定します。

B型慢性肝炎抗ウイルス療法、35歳未満の場合

自然経過で肝炎の沈静化が起きることが期待でき、基本的には経過観察が行われます。 しかし数ヵ月間の経過観察を行っても、肝炎が活動性である場合は治療が検討されます。
エンテカビルやラミブジンなどの内服の抗ウイルス剤はウイルスそのものを死滅させる薬ではなく、ウイルスが増えるのを抑えておく薬ですので、中止をする時期を決めるのが困難で、内服を始めると、長期間服用する必要が生じることが多くなります。 またこれらの薬は胎児への影響が懸念されているため、妊娠(を望む)可能性のあるこの年代ではなるべく使用を避けます。
ラミブジンに関しては治療を長期間行うと、ラミブジンの効かないウイルス(ラミブジン耐性株)の出現が問題となるため、なるべく使用を控えます。
それゆえ治療法としては、まずはインターフェロン療法が行われます。また、ウイルス量が高く、どうしてもエンテカビルなど投与が必要な場合はSequential療法と呼ばれる、エンテカビルからIFNへの連続療法も症例によっては推奨されています。
35歳未満でHBe抗原陰性(-)ならびに肝機能に特別な異常がなければ、経過観察を続けます。

B型慢性肝炎抗ウイルス療法、35歳以上の場合

35歳以上の場合は自然経過で肝炎の沈静化が起こる可能性が低く、エンテカビルあるいはラミブジン治療を行い、肝機能の正常化、HBV増殖抑制を目指し、肝硬変、肝がんへの進行を阻止します。
エンテカビルの抗ウイルス作用は高く、エンテカビルの効かないウイルス(エンテカビル耐性株)の出現も低いとされています。 しかし、ラミブジン治療を長期間行うと、ラミブジン耐性株が高頻度に出現し肝炎が再び起きるという欠点があり、その場合にはアデホビル治療の追加、あるいはエンテカビル治療への変更が検討されます。
以下に慢性肝炎の治療方針を示します。

B型慢性肝炎の治療ガイドライン

治療対象は、ALT≧31IU/Lで
HBe抗原陽性は、HBV DNA 5logコピー/mL以上
HBe抗原陰性は、HBV DNA 4logコピー/mL以上
肝硬変では、HBV DNA 3logコピー/mL以上

HBVDNA ≧7 log コピー/mL <7 log コピー/mL
35歳未満 HBe抗原陽性 1.Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24~48週)
2.Sequential療法
3.エンテカビル
1.Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24~48週)
2.エンテカビル
HBe抗原陰性 1.Sequential療法
2.エンテカビル
1.経過観察、またはエンテカビル
2.Peg-IFNα2a(48週)
血小板15万未満またはF2以上の進行例には最初からエンテカビル

現在、ラミブジン投与中B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤治療ガイドライン

HBVDNA 治療法
<2.1 logコピー/mL持続* 原則エンテカビル0.5mg/日に切り替え
≧2.1 logコピー/mL VBT**なし エンテカビル0.5mg/日に切り替え可
VBTあり アデホビル10mg/日併用

*持続期間は、6ヵ月を目安とする
**VBT:viral breakthrough(HBV-DNA量が最低値より1logコピー/mL以上の上昇)

厚生労働省研究班による平成24年「B型慢性肝炎の治療ガイドライン」より抜粋

現在、多くの慢性肝炎に対する治療法が存在しています。 当院においても基本的には上記の治療方針にそって治療が検討いたしますが、B型肝炎は経過の個人差が大きいため、患者様各個人に合わせて治療を選択していきます。

肝庇護療法

肝庇護療法とは、肝臓が破壊されるのを防ぎ、肝機能を改善させることを目的とした治療法です。 代表的なものに、グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、小柴胡湯(しょうさいことう)があります。
抗ウイルス療法が効かなかった人、副作用が原因で抗ウイルス療法が使用できない人、肝硬変の病態が進行している人、高齢者などが使用します。

C型肝炎に対する治療

C型肝炎の治療には、インターフェロン(IFN)を基本とした抗ウイルス療法と、病態の進展を遅らせる肝庇護療法があります。 抗ウイルス療法には、IFNとリバビリンの併用、ペグ化したIFN(Peg-IFN)、プロテアーゼ阻害薬(テラプレビル、シメプレビル)などが用いられています。
どのIFN治療法を選択するかは患者さんのウイルスの型(C型肝炎ウイルスは1型と2型に分けられます)とウイルス量、年齢、線維化の程度などによって決められます。
以下にウイルスタイプ別の治療方針について示します。

患者さんのウイルスタイプ別のIFN治療の選択

1型 2型
高ウイルス量
5.0LogIU/mL以上
Peg-IFNα2b-リバビリン・テラブレビル三剤併用
(24週間[三剤併用12週間+Peg-IFNα2b・リバビリン併用12週間])
Peg-IFNα2b-リバビリン併用(24週間)IFNβ:フェロン+リバビリン:レベトール(24週間)
低ウイルス量
5.0LogIU/mL未満
IFN(24週間)
Peg-IFNα2a(24-48週間)
IFN(8-24週間)
Peg-IFNα2a(24-48週間)

平成25年B型C型慢性肝炎・肝硬変治療のガイドラインより抜粋

一度はウイルスが排除されても、再びウイルスがあらわれた時や、ウイルスが排除されなかった時には、IFNの再治療が行われます。 再治療によっても十分な効果が得られない場合は、IFN少量長期療法や肝庇護療法(ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンシー)を行います。

以下に各治療薬剤に関して説明します。

インターフェロン(IFN)

ウイルスの増殖をおさえ免疫の働きを高めます。IFNには免疫の種類によって、α、β、γの3つのタイプがありますが、抗ウイルス作用を示すのはα、βです。
IFNを用いた治療は2週間程度入院し、退院後は外来でIFNの注射を続けます。場合によっては外来で導入されることもあります。

リバビリン

IFN との併用療法に使われる抗ウイルス薬です。単独ではウイルスを排除することはできませんが、IFNと併用することでウイルスの排除率を上昇させることができます。

Peg-IFN

IFNより血中にとどまる時間が長く、抗ウイルス作用が持続します。そのため週1回の注射ですみます。外来通院の回数が減り、負担を軽減することができます。

テラプレビル

2011年に使用できるようになった新しい薬です。HCVが増殖するときに必要な蛋白質を阻害し、ウイルスの増殖をおさえることができます。

抗ウイルス療法の副作用にはどのようなものがあるのか?

抗ウイルス療法は効果が高い半面、次のような副作用があり、注意が必要です。

インターフェロンの副作用

  • 1)感冒様症状
  • 2)白血球や血小板の減少
  • 3)貧血
  • 4)間質性肺炎
  • 5)うつ病など精神症状
  • 6)眼底出血
  • 7)糖尿病、高血圧、不整脈の悪化

リバビリンの副作用

  • 1)溶血性貧血
  • 2)催奇形性

テラプレビルの副作用

  • 1)溶血性貧血
  • 2)皮膚障害(多形紅斑、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症など)
  • 3)腎障害
  • 4)膵炎

最近の治療の話題:三剤併用療法について

C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法は年々進歩しています。当初の治療法では難治例の治癒率は3%程度でしたが、2011年末に市販されたテラプレビル(テラビックR)と従来のペグインターフェロン、リバビリンを併用する3剤併用療法が可能となり、難治性のC型慢性肝炎でも70%以上の治癒率を見込めるようになりました。
さらにはシメプレビル(ソブリアートR)が2013年12月から市販されました。シメプレビルは酵素の1つであるプロテアーゼを阻害することにより、C型肝炎ウイルスの寄生と増殖を抑える直接作用型の抗ウイルス剤でこちらもテラプレビル同様、ペグインターフェロン、リバビリンとの3剤併用療法で用います。先行して行われた臨床試験では、治癒率89%と非常に高い効果を認めました。一方で副作用の発現率はテラプレビルを用いた3剤併用療法と同程度でした。また、テラプレビルで認められた皮膚障害や溶血性貧血など重篤な副作用がシメプレビルでほとんど見られず、高齢者などにも使いやすい薬剤であると言われております。
三剤併用療法においては治療可能な施設が限られておりますが、当院では治療可能ですので、積極的にこれらの治療を施行させて頂き、肝炎の治療に取り組んでいきたいと思います。

肝がんの検査

前項でも述べましたがわが国の肝がんは、大多数が肝炎ウイルスの感染によって起こっています。 つまり、ウイルス性肝炎の患者様は、肝がんになる危険性が高いです。 肝がんの危険因子としてはこのほか、肝硬変、アルコール摂取、糖尿病などの生活習慣病などもあります。 これらの患者様も定期的な経過観察が必要です。「肝癌診療ガイドライン」では、超高危険群に対し、肝細胞がんを早期発見するために、3~4カ月ごとの超音波検査と血液検査を行うよう勧めています。 また超音波検査のみではみつかりづらい肝がんもありますので画像検査としてCT、MRI検査を併用することが勧められています。 当院においても危険因子を有する患者様はもちろん、希望のある患者様に対しても積極的に検査を施行させて頂きます。 また、各種検査を施行しても肝がんと診断できないような場合には造影エコーや血管造影とCTを組み合わせた特殊検査(CTA,CTAP)や肝生検検査なども積極的に施行していき、なるべく確定診断が得られるように努めていきます。

肝がんの治療

肝がんの治療は肝臓学会で提案された「肝癌診療マニュアル」中のコンセンサスに基づく「肝癌治療アルゴリズム」等、各種治療指針を基にして決定されます。

アリゴリズム

当院ではラジオ波焼灼療法(RFA)、経皮的エタノール注入療法(PEI)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈リザーバー併用下肝動注療法(HAIC)、静脈リザーバー併用全身化学療法(Systemic chemotherapy (i.v.))経口抗癌剤(ソラフェニブ等)による全身化学療法(Systemic chemotherapy (p.o.))などをおこなっており、患者様の肝がんの状況を正確に把握し、また肝機能や腎機能などの身体的な状況を考え、最も有用な治療を提供できるように努めております。
各種肝がん治療の詳細、当院独自の治療に関して下記に説明致します。

ラジオ波焼灼療法(RFA)・経皮的エタノール注入療法(PEI)

治療

資料参照:バイエル薬品㈱、大切にしたい、いのちのビジョンHPより引用

この治療の適応となる患者様はがん病変が切除不能または患者様が切除を希望しない、病変が3cm3個以内あるいは5cm以内単発、肝機能が悪くないことや出血傾向がないなどの制限がありますが、治療部位の再発はかなり低く、成績の良い治療です。
当院では患者様それぞれの状況に対して臨機応変に適応拡大して治療を行っています。また、それにともない肝動脈塞栓療法との併用や人工胸水、人工腹水併用下ラジオ波焼灼療法も行っております。

治療

ラジオ波施行例

治療

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝動脈化学塞栓療法(TACE)とは肝がんへ血液を送っている動脈から抗癌剤を注入後その動脈を塞ぐ治療法です。
肝臓は、肝動脈と門脈という2つの血管から血液の供給を受けていますが、肝がんは、肝動脈からの血流が大部分を占めています。一方、正常の肝臓はほとんど門脈から血液を受けます。
そのため肝動脈に抗癌剤を注入し、その動脈を塞げば、ほぼ腫瘍のみを壊死に導くことができ、正常な細胞は門脈からの血液によりほとんど障害を受けずに済みます。
具体的には、カテーテルという細い管を、局所麻酔後、大腿部のつけ根にある大腿動脈あるいは腕の動脈から挿入して、肝動脈までカテーテルを進め、油性造影剤と抗がん剤の混合液を注入します。抗がん剤には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)やエピルビシン、マイトマイシンC、シスプラチン、ミリプラチンなどを使います。その後、塞栓物質として1mm角前後の細かいゼラチンスポンジを注入して動脈を閉塞します。

治療

左:治療前CT動脈相
中:血管造影
右:治療後単純CT(肝がんに集積した抗癌剤は白く見える)
治療前CTで認められた肝がんは血管造影で黒く染まり、この動脈より肝動脈塞栓術を施行したところ、治療後CTで肝がんに抗癌剤が100%集積しているのを確認された。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)の最前線

球状ビーズを用いたTACE

現在、肝動脈化学塞栓療法(TACE)の際には塞栓物質として1mm前後のゼラチンスポンジを注入して動脈を閉塞しますが、欧米ではすでに数百μm単位で粒子径の均一な球状ビーズを塞栓物質として使用することが普及しています。我が国においても2014年2月より発売となり、使用が可能となりました。
このビーズは抗癌剤を吸着させて投与することも可能であり、投与されたビーズから抗癌剤が徐放する機能も持ちます。我が国で発売に先行して行われた臨床試験においては通常のTACE治療に抵抗性な患者様にビーズで治療した場合、奏功する(腫瘍が小さくなる)確率が56%であったと、かなり良好な成績が報告されています。使用が可能となってからまだ間もなく、使用に関してはある一定の基準を満たしていなければ治療施行できませんが当院では治療可能です。当院におきましてはTACE治療抵抗性の患者様はもちろん、積極的に使用していきたいと思います。

治療

治療

従来のTACEのイメージ: 塞栓物質は大きいため血管の根本の方で閉塞。側副路の血行が発達してしまい、がんに栄養がまわってしまって再発する。

治療

球状ビーズを用いたTACEのイメージ: 球状塞栓物質は小さいので腫瘍内部の血管まで入り込む。側副路の血行が入りづらい。

治療

バルーンカテーテルを用いたTACE

通常のTACEはマイクロカテーテルという極細いカテーテルから抗癌剤や塞栓物質を投与しますが、非常に微細なバルーンカテーテルも開発されています。肝臓癌の栄養血管内でバルーンカテーテルを膨らませた状態から抗癌剤が注入可能なので、従来までは血流に乗って薬剤や塞栓物質が肝臓癌まで到達していましたが、血管を一時的に閉塞させ、その結果起きる肝臓内の血流動態の変化を利用して、より効果的な抗がん剤や塞栓物質の注入を期待する新たな手法(Balloon occluded TACE:B-TACE)です。特に巨大な肝がんには有効な治療であると期待されております。当科におきましても積極的に取り入れていこうと思います。

治療

治療

肝動脈リザーバー併用下肝動注療法(HAIC)

肝動脈リザーバー併用下肝動注療法(HAIC)は、肝細胞がんを養う動脈に抗がん剤を注入する治療法です。高濃度の抗がん剤を直接投与することができるので効果が大きくなると同時に、同じ薬を静脈注射して全身投与する場合に比べて抗がん剤の総量は少なくて済むため、副作用が少なくなるメリットがあります。
肝動脈塞栓療法(TACE)と同じように、カテーテルという細い管を大腿付け根の動脈から通し、肝動脈まで進めた後、皮膚の下に埋め込んだ小さいタンクのような器具(ポート)に接続し、埋め込みます(図)。抗がん剤は、週に5回程度の頻度で、このポートに注射針を刺して注入します。埋め込みとはいえ、針を抜いてしまえば外見上はポート部の皮膚が多少盛り上がる程度で、普段通りの生活をすることが可能です。

治療
図 肝動脈内注入化学療法

この治療法の適応となる患者様:

TACE等が適応にならない、がんがより進行した患者様となります。

効果について:

がんがより進行した患者様が対象となるため、従来までは治療したとしても奏功する(腫瘍が小さくなる)確率が30%程度、治療開始からの平均生存期間は12ヶ月前後と言われておりました。
現在では従来使用されている抗癌剤の組み合わせの内容を変えたり、投与方法の工夫をしたりすることで、奏功率が60-80%、治療開始からの平均生存期間は30ヶ月程度と驚くべき効果を認めたと報告している施設もあります。

副作用に関して:

吐き気、全身倦怠感、骨髄抑制、肝機能障害など抗癌剤特有の副作用が認められますが、いずれもしっかりとした対応により対処可能となっております。
当院においても治療効果の高い抗癌剤の組み合わせや投与方法の工夫などを積極的に取り入れて、副作用にも適切に対応していきたいと思います。

治療

その他の治療

今回はご紹介できませんでしたが、当院では他にも静脈リザーバー併用全身化学療法(Systemic chemotherapy (i.v.))経口抗癌剤(ソラフェニブ等)による全身化学療法(Systemic chemotherapy (p.o.))など、肝がんの治療に関して積極的に取り組んでおります。

脂肪肝はこわい

脂肪肝という病気があまりにも一般的になってしまったせいもあり、脂肪肝は怖くない病気だと勘違いされている人が多く見受けられます。
脂肪肝は肝臓に脂肪が溜まり、肝機能が徐々に損なわれていく病気です。脂肪肝くらい大丈夫だろうと考えていると数年後、数十年後には肝硬変や肝臓癌に進行してしまう可能性のある病気なのです。
脂肪肝の症状としては初期の段階ではほとんど自覚症状はありません。
肝臓は元来、沈黙の臓器といわれるくらい我慢強い臓器で多少の無理をしたとしても自覚症状があらわれることはほとんどありませんから、脂肪肝が進行して「疲れやすい・体がだるい・食欲がない」といった、肝臓病の一般的症状があらわれた場合はすぐにでも治療をしなければなりません。
脂肪肝の原因としてあげられるのが、「肥満」「アルコール」「糖尿病をはじめとした代謝異常」の3つですが、「肥満」と「アルコール」が原因の約70%をしめています。

非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)

脂肪肝の中でも注意しなければならないのが「非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)」です。この脂肪肝の原因は「肥満」です。 普通の脂肪肝も非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)も原因は肥満なのですが、非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)の場合は「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」に進行してしまう可能性があります。
この「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」は、原因がわからず、治療法も無く、その10%が肝硬変や肝臓癌に進行してしまうこわい病気です。初期の段階では普通の脂肪肝なのか非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)なのかは血液検査やエコーだけでは難しく、判断がつきませんので肝臓に針を刺して肝細胞を取って検査する「肝生検」という方法で診断することもあります。

この非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)ですが、初期の段階で適切な治療を行えば、次の段階である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行することはありません。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)の患者のうち10%が発症すると言われる病気です。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も他の肝臓の病気と同じで、初期の段階ではまったく症状があらわれません。
症状が現れないことで、そのまま放置していると数年のうちに肝臓の細胞が壊死していき、肝臓の繊維化、そして肝硬変や肝臓癌に進行していきます。 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と診断するためには前述した「肝生検」が必須の検査となります。
また、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と診断された場合ですが、治療としては食事・運動療法を基本として、糖尿病治療薬、高脂血症治療薬、肝庇護剤、抗酸化薬、等の薬物療法、瀉血や鉄制限食などの除鉄療法等が行われております。
当院におきましても、脂肪肝や非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)のうちから積極的に生活指導を行い、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が疑わしい場合は確定診断を行い、積極的に治療を取り入れて肝硬変への移行や発癌予防に努めていきたいと思います。

アルコール性脂肪肝

ここまで話すと、アルコールは意外に怖くは無いとも思われがちですが、過食による脂肪肝同様にアルコールも飲みすぎると肝臓で中性脂肪が合成され、体内に中性脂肪がたまりやすくなります。 そのような状態になればアルコール性の脂肪肝や肝炎となり、そのまま飲み続ければ肝硬変を発症するまでそれほど時間がないものと思われます。

肝炎ウィルス健診

札幌市が行っている肝炎ウイルス検査です。

対象者 札幌市に在住している方でこれまでに肝炎ウィルス検査を受けたことのない方
費用 無料
検査項目 B型肝炎ウィルス・C型肝炎ウィルス検査
検査内容は問診・血液検査です。
受診に必要なもの 健康保険証や運転免許証など(住所・氏名・年齢のわかるもの)

患者さまへ

以上、ざっと肝臓病およびその治療に関してご紹介させていただきました。 今回ご紹介できなかった項目もたくさんありますので、順次追加でご紹介させていただきます。 また、新治療もどんどん開発されている分野ですのでこちらも順次ご紹介いたします。
肝臓病の患者様はもちろん、肝臓の検査をしてみたい等、希望のある患者様はどうか気軽に当院を受診して下さい。 他の臓器の病気とは違い、比較的長い間通院が必要となる病気もありますので、治療はもちろん、病気の説明をしっかりさせて頂き、患者様と強固な信頼関係を築いて診療に全力で望みたいと思います。