多くの薬を服用することの問題点(ポリファーマシー)
2021年10月20日
IMSグループ 薬剤部門
ポリファーマシーとは何か?
ポリファーマシーとは、多くの薬を服用することにより副作用などの有害事象を起こすことです。ポリファーマシーは単に多くの薬を服用することではなく、また、薬を併用することが悪いということでもありません。
多くの薬を服用することで副作用が増加したり、飲み間違いをしたり、薬を飲むのをやめてしまったりということに繋がってしまうことが問題とされています。
ポリファーマシーの影響とは?
ポリファーマシーの影響は、特に高齢者に出やすいとされています。
年齢を重ねると、複数の疾患を持つ人が増えてきます。そして疾患の数だけ処方される薬も多くなります。通常の外来では平均4.5種類、70歳以上で平均6種類以上服用しているという調査もあります。そして、高齢者の場合、6剤以上服用すると有害な事象を起こしやすくなることが報告されています。
年齢とともに肝臓や腎臓の働きが弱くなり、薬を分解したり体の外に排出したりするのに、時間がかかるようになります。また薬の数が増えると、薬同士が相互に影響し合うこともあります。そのため、薬が効き過ぎてしまったり、逆に効かなくなってしまったり、副作用が出やするなることなどポリファーマシーのリスクが高まります。
ポリファーマシーの原因とは?
①新たな症状が加わるために、新たな診療科や医療機関を受診すること
ある症状に対してA病院を受診し、違う症状に対してB病院、C病院を受診した場合、 それぞれの病院で2、3種類の薬しか処方されなかった場合も、結果としてたくさんの薬を服用することになります。
②処方カスケード
カスケードとは、何段も連なった小さな滝のことを指しています。このことから、同じものがいくつも連続して物事が生じる様子を表します。
ある症状を治療するために服用した薬で副作用が出てしまった場合、この症状をまた別の薬で治療しようとすることで、薬の服用が増えていく悪循環が生まれることがあります。このことを処方カスケードと言います。
例えば下記のような例があります。
- 痛み止めを服用した
- 痛み止めの副作用で便秘という副作用が出た
- 便秘の薬として下剤を服用した。
- 下剤の副作用で吐き気という副作用がでた
- 吐き気を抑えるため吐き気止めを服用でた
多くの薬を服用することの問題点
ポリファーマシーには下記のような問題点が挙げられます。
- ふらつきや意識障害による転倒などによる骨折の危険がある
- 便秘や排尿障害が起こりやすくなる
- 複数の薬剤が処方されることによる薬剤費が高くなる
- 服用の手間がかかるなどの理由で必要な薬が飲まなくなる危険がある
- 医薬品の飲み合わせが起こる危険がある
- 薬の数が増えることによる処方や調剤の間違いが起こる危険がある
ポリファーマシーの予防策
多すぎる薬を減らすことは大事ですが、薬を使わなくていいということではありません。
薬は正しく使えば、病気の治療や生活の質向上に役立ちます。
ポリファーマシーを防ぐためにも、薬との向き合い方を考えていきましょう。
- 自己判断で薬の服用を中止しない
- 受診する際には服用中(使用中)の薬の内容を必ず伝える
- 自分の病気と服用している薬を把握してもらうため、かかりつけの医師や薬剤師をもつ
- 1冊のお薬手帳で薬の管理をする
- 若いころと同じだとは思わない
お薬手帳を活用して、かかりつけの医師や薬剤師に自分の病気と薬を全て把握してもらうとよいでしょう。もし市販の薬やサプリメントなどをご自身で購入して服用する場合には、お薬手帳に書き込んでおくと医師、薬剤師が把握しやすくなります。市販のお薬やサプリメントも、成分によっては病院から処方された薬との飲み合わせが悪いこともあります。
年齢を重ねると、体の状態や薬の効き方が変化します。そのため、年齢や体調などに適した処方がされています。安全を第一に考えた薬の使い方を心がけていきましょう。
いつもの薬でも、『なにかおかしいな』、『普段と少し違うかな』など感じることがあったら、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。また、気になる事や症状、次の受診時に相談したいことなどは、お薬手帳にメモをしておくと便利です。外出や旅行などの際にも携帯しておくことで、急に医療機関を受診することになった時にも、服用している薬を確認することができるため、安全に治療を受けることができます。『薬の服用記録』としてだけではなく、ご自身の健康管理をサポートするツールとして、ぜひ『お薬手帳』をご活用ください。