当科の対象疾患として、閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、シャント関連手術などがあります。
足や手の動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなり、さまざまな症状をひき起こす病気です。
患者数は40万人程度と推測され、無症候性のものを含めると50~80万人前後の患者群がいると推測されます。
足に動脈硬化症があると、心臓や脳などの全身の動脈にも動脈硬化症がある可能性があります。心筋梗塞や狭心症、あるいは脳梗塞などの危険があるということです。
末梢動脈疾患による血行障害の治療には次の4つの方法 があります。
①保存的治療(運動療法+薬物療法):血管を拡張する薬や、血液をサラサラにする薬を使いながら、運動をして、閉塞している周囲の血管を増やして、血液の流れを改善し ます。
②カテーテル治療:血管内に挿入したカテーテルを使用して、狭窄部位や閉塞部位をバルーンで拡張したり、ステントを留置して血流改善をはかります。局所麻酔で行うことができ、低侵襲ですが、再狭窄が起こることがあります。
③バイパス手術:閉塞している部分を迂回した血管を作ります。人工血管や別のところの自分の血管を使用します。
④血管再生治療:保存的治療でも症状が改善せず血行再建 術の適応にならない患者さんを救済するための新しい治療法です。臨床試験が行われています。
急性動脈閉塞症は、動脈が突然閉塞し、急性の循環障害をきたした状態です。
迅速、的確な診断と適切な治療を行わなければ壊死に至ります。虚血状態にある組織に血流が再開すると、その組織内で様々な毒性物質が産生され、障害が起こることがあります(虚血再灌流障害)。
急性動脈閉塞症は治療が遅れると死に至る可能性もある重篤な疾患です。
急性に発症し、進行する8痛、脈拍消失、 蒼白、知覚鈍麻、運動麻痺の5つの徴候がよく知られている症状です。典型例では、激しい痛みで発症し、患肢は冷たく蒼白と なり、知覚鈍麻をきたすようになります。
発症から手術までの時間が肢の予後を左右し、発症6時間以内に血流再開が得られれば高率に救肢が可能ですが、24時間を経過すると約20%が切断に至るとされています。
原則、外科的血栓除去術が適応となります。閉塞した動脈自体に問題があると、これらの治療だけでは不十分な場合も多く、適切な時期に人工血管などを用いたバイパス手術の追加が必要となります。
動脈と静脈を吻合する動静脈瘻造設、人工血管移植術、動脈表在化、永久カ テーテル移植術、シャント不全に対するカテーテル治療を行っています。
下肢の静脈には、血液が逆流しないように弁がついています。
この弁が壊れると血液の逆流が起こり、うっ血が生じて血管が拡張しコブになったり、皮膚が変色したり、重症例では潰瘍となります。
日本人の約9%に下肢静脈瘤があり、患者数は1,000万人以上。
出産経験のある成人女性の2人に1人が発症します。
立ち仕事(調理師・美容師・販売員)などが原因となります。
症状としては、「足の血管が膨らんでぼこぼこしている」という外見的な症状のほかに、足がだるい、重い、痛い、つる、むくむ、かゆいなどの症状があります。
重症化すると血流うっ滞による皮膚炎を起こし、皮膚が黒ずんできたり、潰瘍を形成したりします。
1)保存的治療
2)硬化療法
3)血管内高周波/レーザー焼灼術などが挙げられます。
<保存的治療>
寝るときに足を高くする、軽い運動をする、長時間の立ち仕事を避ける、弾性ストッキングを着用するなどの治療法です。静脈瘤による症状を軽減するための治療法で静脈瘤そのものが治るわけではありません。
<硬化療法>
静脈瘤に薬を注射して固めてしまう治療です。外来で10分程度で行うことができます。大きな静脈瘤にはあまり有効ではなく、単独治療ではほとんどの場合再発する、という欠点があります。
<血管内高周波/レーザー焼灼術>
血液が逆流する表在静脈の中に細いカテーテルを通し、高周波/レーザーを照射することにより、血管壁を損傷・収縮させて静脈を閉塞させます。日帰り手術も可能です。
深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。
血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。
血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。
血栓が剥がれて血流に乗り、肺に到達すると、肺塞栓症を引き起こします。
以下のような治療があります。
抗凝固薬(最も一般的):血栓の増大予防と、肺塞栓症の予防のため、血液をサラサラにする薬。
血栓溶解薬:血栓を溶解させる薬。
まれに血栓フィルター:フィルターで血栓を捕らえ、肺への到達を防ぎます。