ドクターインタビュー
内視鏡とレーザー活用で体に優しい胆石の治療
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当院 丹野院長のインタビュー記事が、マイホスピタルに掲載されました。
マイホスポタル
マイホスピタルは隔週にIMSグループ内で発行されている広報誌でございます。
IMSグループ病院施設の最新情報や、医療への取り組みをご紹介しております。
当院の丹野院長のインタビュー記事が、マイホスピタルに掲載されました。
インタビュー記事
胆石の中でも総胆管に詰まった大きな結石は、開腹手術でしか治療できないと思われてきました。
しかしイムス札幌消化器中央総合病院では、内視鏡+胆道鏡でレーザー治療を駆使し、結石を直接粉砕。排石用バルーンカテーテルで見事に取り除きます。
最新の内視鏡で胆道や膵臓疾患に挑戦してきた丹野誠志院長に、代表的な胆石の低侵襲手術と、気になる膵臓がんの予防についてうかがいました。
大きな胆石も内視鏡手術で取り除く
イムス札幌消化器中央総合病院の消化器内科には、全国的にも珍しい「胆石・膵臓外来」と「膵臓・胆道ドック」が設けられています。先生は、胆のうと膵臓疾患のエキスパートとうかがいますが、まずどんな臓器なのか教えていただけますか?
胆のうは肝臓のすぐ下に位置し、肝臓で作られる「胆汁」を濃縮し蓄えておく臓器です。食事で摂った脂肪やコレステロールは水に溶けない成分なので、胆汁はこれらを乳化して消化・吸収を助ける働きをします。食べ物が胃から十二指腸に入ってくると、胆汁は胆のう→総胆管→十二指腸へと放出されます。胆のうと総胆管を合わせて「胆道」と呼ぶこともあります。 一方、膵臓は胃の裏側にあって、消化液である「膵液」と、血糖値をコントロールするホルモン「インスリン」および「グルカゴン」を分泌するとても大切な器官です。膵液は膵管を通り、十二指腸に放出されて、脂肪、タンパク質、炭水化物の消化に働きます
胆のうの病気では胆石がよく知られていますね。食生活の欧米化で近年増えているとか。
胆石を持っている人は、人口の10〜15%と推測されています。胆のうの中にできた「胆のう結石」と、胆のうから石が落下した「総胆管結石」の2タイプがあり、まれに総胆管内で結石が発生することもあります。多くは胆汁の中のコレステロールが固まったもので、大きさも個数も人それぞれ。 結石が動いて胆のう管や総胆管に詰まると、痛みや発熱、胆汁うっ滞による「黄疸」などの症状が出てきます。十二指腸に接する膵管の出口に、この結石が嵌って膵液を放出できなくなり、急性膵炎を起こすケースもあります。
胆石の治療法は?
飲み薬で石を溶かす治療もありますが、完全に消失させるのは困難なので、結石を除去するのがベストでしょう。内視鏡や腹腔鏡を活用した、体への負担が少ない低侵襲手術が進化しています。
具体的にはどんな手術を?
胆のう結石は石だけ取り除いても、体質的に再発を繰り返す方が多いため、一般に腹腔鏡下で胆のう摘出術を行います。お腹に4ヵ所小さな穴を開け、腹腔鏡や超音波メス、鉗子などの器具を挿入。動画画面を確認しながら行う手術です。開腹の必要がありませんから、3〜5日で退院できます。
総胆管結石は?
内視鏡手術=「内視鏡下胆道結石砕石術」が可能です。口から胃→十二指腸へと内視鏡(親カメラ)を挿入。十二指腸乳頭部をわずかに切開し、そこからさらに胆道鏡(子カメラ)を総胆管に送り込み、結石にアプローチします。石が直径1センチ未満と小さければ、排石用バルーンカテーテルで引き出したり、バスケット鉗子で摘み出したりすることが可能です。
胆のうから落下した大きな結石が総胆管に詰まっている。
胆道鏡下レーザー砕石術による治療対象となる
もっと大きな結石もあるのですね?
2〜3センチ以上の結石が複数個詰まっている難治性の総胆管結石があります。総胆管そのものも大きく腫れあがり、傷ついて感染しやすくなるので、早急に治療が必要です。
そんなに大きくても、内視鏡手術が可能なのですか?
はい。普通は開腹手術で取り出す医療機関が多いのですが、当院では胆道鏡にホルミウムレーザーを併用し、大結石を砕いて取り除く「胆道鏡下レーザー砕石術」を実施しており、学界でも注目を浴びています。このレーザーは有効照射範囲が0.1ミリなので、周りの組織を傷つけることなく、結石のみを砕くことが可能。極めて低侵襲で安全性も高いのが特徴です。照射時間そのものは10〜15分ほど。粉々になった石は、排石バルーンなどで取り除きます。
高齢者や持病があって全身麻酔下の開腹手術のできない方には朗報ですね。
当院ではがんなどで胃を全摘し、ルーワイ再建術を受けた患者さまでも、内視鏡下胆道結石砕石術や、内視鏡下レーザー砕石術を受けていただけるよう、術式を工夫しました。ルーワイ再建術とは、食道と小腸を繋いで消化管を形成。十二指腸を胆道・膵臓と小腸を繋ぐバイパスとして活用する再建術です。十二指腸から小腸へ胆汁と膵液が流れ込み、消化活動を行っています。
高齢者や持病があって全身麻酔下の開腹手術のできない方には朗報ですね。
当院ではがんなどで胃を全摘し、ルーワイ再建術を受けた患者さまでも、内視鏡下胆道結石砕石術や、内視鏡下レーザー砕石術を受けていただけるよう、術式を工夫しました。ルーワイ再建術とは、食道と小腸を繋いで消化管を形成。十二指腸を胆道・膵臓と小腸を繋ぐバイパスとして活用する再建術です。十二指腸から小腸へ胆汁と膵液が流れ込み、消化活動を行っています。
食道から小腸→十二指腸→総胆管の内視鏡ルートは、高速道路のインターチェンジのように曲がりくねって複雑ですね。
ダブルバルーン内視鏡という特殊な内視鏡を使うことで可能になりました。カテーテルに装着した二つのバルーンを交互に膨らませたり縮めたりすることで、内視鏡を〝尺取虫〞が這うように、自在に操ることができます。必要ならレーザーも併用し、総胆管結石を除去。この手技が実施できるのは、国内でもごく限られた医療機関だけだと思います。
胃が全摘されているので、食道に小腸がつないである(小腸の先は大腸へ)。一方、十二指腸の片端は小腸に、もう片方は胆道・膵臓の出口(総胆管と膵管)につながっていて、胆汁と膵液を小腸へ送り込む。これをルーワイ再建と呼ぶ
治療前:総胆管に多数の結石が詰まっている
治療後:結石は一つ残らず取り除かれた
素晴らしいですね。先ほどの話の、膵管の出口に詰まった石も内視鏡手術が可能ですか?
もちろんです。膵管内に膵石ができることもあるので、これも内視鏡下で治療します。
膵臓・胆道ドックでしっかりがんを予防
「膵臓・胆道ドック」を受ければ、胆石も膵石もしっかり見つけて対処できますね。
はい。さまざまな疾患を見つけることができますが、このドックの一番の目的は胆道がんと膵臓がんの早期発見です。どちらもおとなしい臓器なので、がんを発症しても初期はほとんど自覚症状がなく、進行・浸潤し、近接あるいは遠隔臓器に転移してから見つかる例が少なくありません。腫瘍が臓器に限局するⅠ期や、近接リンパ節にのみ転移したⅡ期であれば、外科手術で完治がめざせるのに、とても残念です。
ドックでは腫瘍マーカー検査を含む血液検査と腹部超音波検査に加え、造影剤のいらないMRI(磁気共鳴画像検査)を行います。MRIには胆管と膵管を多角的に撮影・描出するMRCPも含まれ高精度。飲酒や喫煙習慣のある方、肥満の方、糖尿病の方、慢性膵炎の方、近親者に膵臓がんや胆道がんの既往歴のある方はがんリスクが高いので、ぜひ受診してください。
なお検査の結果、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)が見つかった方は、膵臓がん早期発見のため定期健診が必要になります。
どんな病気ですか?
膵のう胞疾患の一つで、膵臓内に増殖した細胞が溜まる袋状の腫瘍ができるものです。IPMNのある方は、ない方と比べると膵臓がんの発生リスクがぐんとアップするといわれ、最近の臨床研究では15倍という結果がでました。現在、日本膵臓学会を中心としたチームで、IPMN患者2千人以上を対象に、前向き追跡調査(多施設共同研究)がスタート。どんな方がよりハイリスクなのか、解明が進むでしょう。
IPMNは悪性化することがありうるのですね?
60歳代以上であれば、1割程度の方に発生するといわれ、珍しい疾患ではありませんし、膵臓がんに発展するのは一部です。ただ袋の中にポリープのような病変ができるようになると、悪性化が疑われます。早期の膵臓がん治療に準じ、膵臓の部分切除が検討されます。
十分に治療可能ですし、もし膵液やホルモンの分泌能力が低下しても、インスリン療法や膵酵素補充療法が進化しているので、心配はありません。