医療コラム
うつ病でイライラするのはなぜ?
原因や正しい対処法
うつ病は、気分が落ち込んで何もする気がなくなる病気です。ところがイライラ感が主な症状のうつ病も存在します。
この記事では、うつ病でイライラする原因・病態について解説します。また、イライラする場合の対処法もご紹介します。うつ病で悩んでいるとき、自分がうつ病なのかを知りたいときに役立ててみてください。
うつ病になるとイライラする?
うつ病とは、深い抑うつ気分を抱いてしまい、物事に対する興味や喜びが減って、社会活動に支障をきたす病気です。抑うつ気分とは、気分が落ち込んで何もする気にならない状態です。そのため口数が減り、活動性も低下することがよくみられます。
ところが、イライラ感が主な症状のうつ病もあります。思いどおりにいかないと不機嫌になり、イライラ感が募ります。相手に対して不機嫌そうな返答をしたり、無視したりします。以前よりも口調が強くなる場合もあります。
強烈な怒りを覚え、攻撃的になり、周囲に当たり散らしてトラブルを招きがちです。またカッとなって、人に手を出してしまうことがあります。
さらに身の周りの物を壊すこともあるくらいです。攻撃的な行為のため、抑うつ状態と逆にみえるかもしれません。
うつ病でイライラするのはなぜ?
うつ病の中には不安や焦燥感が目立つタイプがあります。焦燥感とは、理由がないのに焦り(あせり)を感じ、そわそわして落ち着かない状態です。
何かに追い立てられるように感じて、居ても立っても居られないといった具合です。また集中力が低下し、ミスが多くなり、仕事の効率が低下します。
こういった状況を受け入れられず、焦り、イライラが強くなります。そのため周囲の人にあたってしまうこともあります。
しかし焦りやイライラは誰にでもみられる感情です。通常は一時的にみられるだけであり、あまり問題になることはありません。自然に気持ちがコントロールされるからです。
それではうつ病になると、どうしてイライラしやすくなるのでしょうか?それはうつ病になると、気持ちをうまくコントロールできなくなるからです。
また物事に対する興味や喜び(欲動)が減少します。こういった感情・欲動の障害からイライラしやすくなります。
うつ病の病態仮説
それでは、なぜうつ病で感情・欲動の障害が起こるのでしょうか?
うつ病の原因・病態はまだまだ解明されていない点が多いのですが、以下のような仮説が考えられています。
1.何らかの遺伝的要因が存在
2.心理的葛藤、社会的ストレス、思春期・退行期・老年期のライフスタイルが影響
3.間脳の機能障害を起こす
4.間脳においてモノアミンの代謝障害をきたす
5.モノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン)が欠乏
6.モノアミン作動性神経系の機能障害が生じる
7. 感情・欲動の障害が起こる (注1
モノアミンは感情・欲動をコントロールする神経伝達物質です。これの欠乏によって感情・欲動の障害が起こります。
遺伝的要因や心理的葛藤が、どのようにして間脳に機能障害を引き起こすのかは分かっていません。
うつ病でイライラする場合の対処法
日常生活の中での対処法をご紹介します。
親しい人に悩みを打ち明ける
悩みを打ち明けるだけで気持ちは軽くなります。
またイライラ解消法が見つかることもあるでしょう。
誰とも話したくない場合は、悩みを紙に書き出すだけでも効果的です。
日光を浴びて運動する
日光を浴びると幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されます。
日光浴はうつ状態に効果的です。適度な運動はストレス解消にもつながります。
できるだけ笑う
言葉が気持ちを左右するように、笑うまねをするだけで、脳は楽しいと感じます。
そのため意識的に笑うことでうつ状態は改善します。
お笑い番組・コミック映画を見たり、笑いヨガなどに参加したりすることもおすすめです。
十分な睡眠をとる
ストレスにより分泌されるコルチゾールは、睡眠により適正化されます。
十分な睡眠はストレスを解消させるため、うつ状態が改善します。
また自律神経のバランスも整うため、イライラ感も軽快します。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活は体内時計を整えてイライラ感を軽減します。
十分な睡眠は大切ですが、寝すぎも良くありません。
朝は決まった時間に起床し、規則正しい時間に食事をとり、適度な運動をしましょう。
心身の健康を保つのに効果的です。
無理をしない
無理をするとストレスが増えてイライラ感が増します。
余裕のあるスケジュールを立てて活動することが肝心です。
無理をしなくて済むように、家族・友人に助けを求めるのもよいでしょう。
ストレスの基から離れる
できるだけイライラさせるもの(ストレス因子)から離れるようにしてください。
ストレス因子から離れて深呼吸するだけでもイライラは軽快します。
深呼吸はイライラをおこす交感神経の興奮を抑えるため効果的です。
ヨガ・座禅をする
ヨガ・座禅で瞑想(めいそう)し、精神をリラックスするのもよい方法です。
ゆっくりと意識を集中し、雑念を払います。
自分を認める気持ちを養うことで、うつ状態が改善します。
うつ病に関するその他の症状について
うつ病ではイライラ以外にもさまざまな症状がみられます。
以下の症状のうち5つ以上が2週間ほぼ毎日のように見られるのが特徴です。
ただし必ず抑うつ気分または興味・喜びの減少を含みます。
- ほぼ1日中つづく抑うつ気分
- 物事に対する興味や喜びの減少
- 体重減少あるいは増加、食欲の減退もしくは亢進
- 不眠または過眠
- 精神運動焦燥(あせっていらだつこと)・制止(思考・行動が遅くなること)
- 疲労感・気力減退
- 無価値観・不適切な罪悪感
- 思考力・集中力の減退
- 死・自殺について繰り返し考える、自殺を企てる (注2
人によっては、抑うつ気分または興味・喜びの減少などの症状を訴えない場合がありますが、専門的にたずねると確認できます。
うつ病でお悩みの方へ
うつ病とは、深い抑うつ気分をいだき、物事に対する興味や喜びが減って、社会活動に支障をきたす病気です。
イライラ感が主な症状のうつ病もあります。
うつ病では、感情・欲動の障害からイライラしやすくなります。
イライラする場合、親しい人に悩みを打ち明けるなどで対処してください。
日常での対処法で改善しない場合は我慢せずに、心療内科・精神科を受診して精神療法・抗うつ薬などで治療を受けるとよいでしょう。
日本橋にある「スマイルクリニック イムス東京」(略してスマクリ)では、豊かな経験と資格を有する専門医が、正しく診断、治療をいたします。
参考資料
注1) うつ病の脳科学的研究:最近の話題 - PDF
注2) 抑うつ障害群の症状と徴候 – MSDマニュアル
注3) 日本うつ病学会治療ガイドライン|うつ病/大うつ病性障害2016 - PDF