不眠症
不眠症とは
わが国では5人に1人が「よく眠れていない」と感じており、特に60歳以上の高齢者では3人に1人が睡眠に問題があるといわれています。不眠とは身体的な疾患や精神的なストレス・疾患など様々な原因により十分な睡眠がとれない状態が慢性的に続いている状態をさします。
不規則な生活リズムや環境の変化、気がかりや心配ごとあって寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、夜中に起きてしまうなどは一時的な不眠と考えられます。
不眠症の種類
不眠の症状は人によっていろいろなパターンがあいますが、不眠の症状は4つに分類されます。
- 入眠障害(寝つきが悪く、寝入るのに30分以上かかる)
- 中途覚醒(途中で目が覚めてしまいなかなか寝つけない)
- 早期覚醒(朝とても早く目が覚めてしまう)
- 熟眠障害(ぐっすり眠った感じがしない)
不眠の症状は、この4つの症状が単独または複数組み合わさり、その出かたは人それぞれです。
いずれにしても睡眠の長さについては個人差があり、睡眠時間の長短は症状としてはとらえません。
なお、「不眠症」の診断基準は、入眠困難、途中覚醒後再入眠困難、早朝覚醒のいずれか一つ以上が存在し、そのために生活に支障が生じており、症状は週に3夜以上おこり、それが3カ月以上続いている場合不眠症と診断されます。
不眠の原因
不眠の原因としては、以下のようなストレス、身体的な疾患、精神的な疾患、薬の副作用などさまざまなものが考えられます。
ストレス
ストレスや緊張
身体的な疾患
高血圧、循環器・呼吸器疾患、腎臓病、前立腺肥大、糖尿病、関節リウマチ、アレルギー疾患、脳出血、脳梗塞などの身体疾患の症状から不眠になることがあります。
精神的な疾患
適応障害、うつ病や双極性障害などの感情障害、統合失調症など多くの精神疾患はそれぞれ症状としての不眠を伴います。
さまざまな薬物
ステロイド製剤、降圧剤、甲状腺製剤、抗がん剤などが不眠の原因となります。
またカフェイン、ニコチンは覚醒作用があり摂取時間により不眠を引き起こします。
生活リズムの乱れ
夜勤のあるシフト勤務、移動にともなう時差など、体内リズムを乱れることが多いです。
生活環境
睡眠をとる際の室内の環境 騒音、光、寝室の温度や湿度など
不眠症の治療
不眠症の治療についてみていきましょう。
不眠症を防ぐ睡眠習慣の改善
まず生活の中で不眠の原因となっている習慣などがあれば、睡眠環境や生活リズムを可能な限り整えるようなアドバイスを行い、睡眠習慣の改善をすすめます。
病院での治療は単純に薬の処方だけではなく、不眠に対する心理面や睡眠習慣、生活環境の調整など、不眠症の原因を突き止め改善していきます。
不眠の改善のためには原因に応じた対応が必要です。
不眠が続くと「また眠れないのでは」と不安になり「眠れないことを悩んで眠れない」ことになり、不眠が悪化する悪循環になります。
不眠の改善のため原因を取り除くためのポイントをまとめました。
睡眠時間にこだわらない
睡眠時間には個人差があります。また年齢とともに睡眠時間は短くなります。
何時間眠れないといけないということはなく、自分に合う睡眠時間がとれていればよいのです。
就寝、起床時間を一定にする
平日、休日にかかわらず、できるだけ同じ時刻に就寝、起床するようにし、睡眠リズムを崩さないように心がけます。人間の体内時計は朝、紫外線を浴びたときにリセットされますから、起きたらすぐ窓を開け、短時間でも外に出て日光を浴びることです。たとえ曇っていても紫外線にあたることです。
昼寝はしない
日中はできるだけ昼寝はせず、活動するようにします。
どうしても眠い時には昼寝は午後3時までに30分以内にはおきましょう。
それ以上長く寝てしまうと、夜の睡眠の質を悪くします。
寝る前までに軽い運動や入浴で十分なリラックスタイムを
入眠には心身の緊張がほぐれ、リラックスした状態でいることが重要です。
光や音の強い刺激をさけ、ストレスを和らげるような行動をします。
入浴はぬるま湯にゆっくりつかり、寝る直前にならないようにします。
運動はストレッチなどの負担にならない程度を早めの時間に行います。
激しい運動や就寝直前の運動は逆に睡眠を妨げます。入浴や運動で深部体温が上がりその後下がることで寝つきをよくなり、深い睡眠が得られます。
アルコール・カフェインは避ける
寝る前の飲酒は眠くなりますが、お酒が覚める浅い眠りとなり、早朝覚醒が増えてきて睡眠の質を下げる結果になります。カフェインは覚醒作用があり、入眠を妨げ、利尿作用もあるので睡眠を妨げます。ニコチンも、カフェインと同じく覚醒作用があるので就寝前の喫煙も注意が必要です。
快適な睡眠環境を準備する
布団、枕などの寝具は自分に合う快適なものを選びます。室内の温度・湿度は心地よいと感じられる程度(睡眠のための適温は約20℃、湿度は40%-70%くらいに調節します。入眠するまで、テレビやスマホなど光や音の刺激となるものは避けるようにします。
眠気を感じてからベッドに入る
「早く寝なくてはいけない」と思い、眠気を感じない時間なのに床に入ると、かえって寝つきを悪くします。眠れないときはいったん寝床から離れて、ベッドでゴロゴロしないようにします。眠気を感じたら、再び寝床に戻るようにします。
不眠症の薬物療法
不眠症の治療は、先に述べた不眠の症状のパターンによって異なります。
睡眠薬にもさまざまな種類があり、症状によっては適切な種類の睡眠薬、または他の向精神薬の使用を行う場合もあります。
睡眠薬については、副作用や依存に対する以前の良くないイメージを持たれている方も多いようですが、現在の睡眠薬は非常に進歩し、安全性の高い睡眠薬が発売されています。
専門医の指導の下に適正に使用していれば、依存してやめられない、体に強い副作用をおよぼしたりすることはありません。
睡眠薬は薬物によりさまざまなプロフィールをもっており、症状や体質、年齢も考慮して処方します。例えば高齢者では副作用が出やすいことがあります。
精神疾患などが背景にある不眠の場合は睡眠薬のみでは効果が乏しい場合もあるため原因疾患の治療とともに、不眠症の治療を考えます。
睡眠が上手く取れない不眠症は持続すると心身が消耗し、仕事や日常生活に支障を来し心身の状態にも悪影響を及ぼし、あらたな病気の引き金になります。ご自分で生活改善をしてみても十分効果が得られない場合にはぜひ専門の心療内科・精神科での相談を検討してみましょう。