医療コラム
その「ふわふわめまい」、脳の疲れによるもの
(PPPD 3PD)かもしれません。
―そのめまいに心療内科ができること―
急なめまいの後
「耳鼻科の検査では異常なし。でも、ずっと体が浮いている感じがする……」
「雲の上を歩くようなふわふわした不安定感やふらつきがある」
「パソコンの画面やスマホをスクロールしたり、人混みを見ると、めまいがひどくなる」
こうした原因不明の長引くめまいは、近年PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい 3PDとも呼びます)という疾患として注目されています。実はこの症状、耳鼻科の領域だけでなく、過酷な環境下で脳が限界を迎えた「適応障害」の一つの形として捉えることができます。
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは?
PPPDは、2017年に国際的な診断基準が確立された比較的新しい概念のめまいです。
これは耳という器官自体の故障ではなく、いわば脳のバランス調整システムが「過敏モード」で固まってしまった状態(機能性めまい)を指します。
PPPDの特徴
- 症状: 浮動感、不安定感、ふわふわ感(回転性ではない)が3ヶ月以上持続する。
- 悪化要因: 立位・歩行時、体を動かした時・動かされた時、視覚刺激(スマホ、人混み、複雑な模様など)、疲労時、夕方。
- 発症: BPPV(良性発作性頭位めまい症)やメニエール病などの急性めまいが治った後に引き続き起こることがある。
- 患者層: 30~50代、特に女性に多い。
- 診断: 臓器に異常がない機能性疾患で、詳細な問診や診断基準に基づいて行われる。
代表的なめまい疾患との違い
よくあるめまいと何が違うのか、比較表で確認してみましょう。
| 疾患名 | めまいの特徴 | 持続期間 | 原因の場所 |
|---|---|---|---|
| BPPV(頭位めまい症) | ぐるぐる回る | 数十秒〜数分 | 耳(耳石のズレ) |
| メニエール病 | ぐるぐる・難聴 | 数十分〜数時間 | 耳(内耳の水ぶくれ) |
| PPPD(本疾患) | ふわふわ・浮遊感 | 3ヶ月以上、毎日 | 脳(情報の統合ミス) |
PPPDの最大の特徴は、
「3ヶ月以上、めまいが続く」こと。
かつて起きた一時的なめまい(BPPVなど)をきっかけに、耳の異常は治っているはずなのに「脳が揺れ感を学習してしまい、リセットできなくなっているバグ」がこの病気の正体です。
なぜ「脳」がバグってしまうのか?
私たちの体は、耳(三半規管)、目(視覚)、足の裏(体性感覚)の3つの情報を脳で統合してバランスを保っています。しかし、一度激しいめまいを経験すると、脳が「もう二度とめまいを起こしたくない!」と過剰に警戒してしまいます。
すると、本来なら無視していいはずの「ちょっとした刺激」に敏感になりすぎてしまうのです。特にオフィスワーカーにとって、以下のような状況は脳をパンクさせる要因となります。
- デジタルワークの負担: パソコンのスクロール、マルチモニターの使用。
- 移動のストレス: 人混みの多い場所、エスカレーター、高いビルの窓。
- 視覚刺激: 陳列棚の多い店舗や、規則的な模様の床。
PPPDは「心身の適応障害」のサイン
私たちは、PPPDを単なるめまいではなく、「ストレスフルな環境に対する脳の適応障害」の一側面と考えています。
脳の「情報処理キャパシティ」の限界
日々、膨大な情報や人間関係、納期に追われるオフィスワーカーの脳は、常にオーバーヒート寸前です。この状態で小さなめまいを経験すると、脳は「今はバランスを失うわけにいかない!」と過剰に防衛反応を示します。
「心の不調」ではなく「脳の防衛反応」
- 脳のオーバーフロー: ストレスで余裕がなくなった脳が、わずかな揺れを「危機」と誤認します。
- 身体化(しんたいか): ストレスが感情(憂鬱など)として出にくい方ほど、脳が代わりに「めまい」という信号を出して、これ以上の刺激を拒絶しようとします。
- 不安との連動: 「また仕事中にふらついたら……」という不安は、脳のセンサーをさらに鋭くし、めまいを長期化させる悪循環を生みます。
適応障害としてのPPPD:なぜ「めまい」として現れるのか?
適応障害とは、特定のストレス源によって心身のバランスが崩れ、社会生活に支障をきたす状態です。PPPDが適応障害を背景に持つ場合、以下のようなメカニズムが働いています。
脳の「緊急停止ボタン」としての役割
適応障害の症状は人それぞれですが、強いプレッシャー下にある方の脳は、感情(涙が出る、落ち込む)で処理しきれないストレスを、体の症状(めまい、動悸など)に変換することがあります。
これを「身体化」と呼びます。 脳が「これ以上、複雑な視覚情報やストレスを処理できない」と悲鳴を上げた結果、めまいを発生させて活動を制限させようとする、いわば緊急停止ボタンのような役割を果たしているのです。
「予期不安」というガソリン
適応障害の特性として、特定の環境(職場や電車など)に対する強い拒絶反応が生じることがあります。
「職場でめまいが起きたらどうしよう」という不安は、脳の扁桃体(不安を司る部位)を過敏にし、本来バランス制御に使われるべき脳のエネルギーを「不安への対処」に浪費させます。このエネルギー不足が、さらにめまいを悪化させるという強固な悪循環を作り上げます。
わたしたち心療内科だからこそできるアプローチ
脳のシステムエラーやストレス反応が絡むPPPDには、心療内科の専門的なアプローチが欠かせません。
「過敏モード」をリセットする薬物療法
SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)などを使用します。これは「心の薬」としてだけでなく、脳のノイズをカットし、過敏になったセンサーの感度を正常に戻すために非常に効果的です。働く方の集中力を削がないよう、副作用に配慮した調整を行います。
「めまいへのとらわれ」を外す(認知行動療法)
「このめまいは脳の誤作動であり、倒れる危険はない」という正しい認識を定着させ、少しずつ活動範囲を広げて脳に安心感を再学習させていきます。
環境調整と根本的なケア
背景に仕事の過負荷がある場合、診断書を通じた業務調整のアドバイスなど、あなたが「適応」しやすくなるための環境づくりを共に考えます。
そのめまいは、脳からのサインかもしれません
PPPDは周囲から理解されにくく、「自分の気持ちが弱いせいだ」と責めてしまいがちです。しかし、めまいはあなたの脳が一生懸命に環境に適応しようとして、限界を迎えたサインにすぎません。
- 耳鼻科で「異常なし」と言われたが、毎日が辛い
- 仕事を続けたいが、めまいのせいで自信を失っている
- めまいのせいで、本来のパフォーマンスが出せない
そんな方は、ぜひ一度当院へご相談ください。症状としての「めまい」だけでなく、その背景にある「あなたを取り巻く環境」も含めて、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。
PPPDは適切な治療によって、再び「地に足がついた感覚」を取り戻せる病気です。
働くあなたに寄り添う専門医として
私たちは症状としての「めまい」だけでなく、その背景にある「あなたを取り巻く働く環境」も含めて、健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。
当院は働く方のライフスタイルに寄り添い、プライバシーに配慮した診療を行っています。便利な場所にあり、お忙しい仕事の合間や仕事帰りでも受診しやすい体制を整えておりますので、お気軽にお問い合わせください。
日本橋にある「スマイルクリニック イムス東京」(略してスマクリ)では、豊かな経験と資格を有する専門医が、正しく診断、治療いたします。
スマクリの3つのモットー
01
信頼できる
確かな目
02
安心して
任せられる
03
心が
笑顔になる
長引くめまいなど心やからだの健康にお悩みの方はぜひ詳細をご覧ください
スマイルクリニック イムス東京の詳細はこちら
