医療公開講座レポート
第102回 「目の不快感、放置すると大変な事になっちゃうよ!
概要
今年の夏は厳しい暑さでした。
そんな中、ハンディ扇風機を使われている方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
ただ、ハンディ扇風機は当て方によってはドライアイなど目に負担がかかってしまう場合があると8月にニュースに取り上げられていました。
※ABEMA TIMES 1秒で涙が蒸発…ハンディー扇風機の使い方に注意 ドライアイに視力低下、失明のリスクも
このように、日常で気づかず、目に負担のかかる行動をとってしまい目の病気の原因になってしまうこともあるかもしれません。
そこで、今回はドライアイの症状や種類にフォーカスした講座内容をお伝えします。
より多くの方が症状に気づき悪化を食い止められるよう、以下に内容をまとめました。
- 開催日:2022年8月26日
- 会場:春日部中央総合病院 食堂
- 登壇者:春日部中央総合病院:眼科 多田 篤史 医師
講座内容 要約
目の不快感って?
- ・目がごろごろする、疲れる
- ・目やにが止まらない。しょぼしょぼする
- ・眼が乾く、少し熱い感じがする
- ・眼になんとなく違和感がある
➡ ※これらは放置してはいけない症状です
目の不快感の原因は千差万別!
例えば、以下のような病気の恐れがあります。
・ドライアイ
・アレルギー性結膜炎
・結膜炎(ウイルス性、細菌性など)
・結膜異物
・角膜異物
・角膜潰瘍
・マイボーム腺炎
など….
ドライアイ
ドライアイって?
- ■ドライアイのイメージは…
「dry eye」→「乾き目」というイメージをもっているでしょうか? - ■ドライアイのイメージから予想される訴え・原因はこんな感じ…
・訴え:目が乾く、ごろごろする
・原因:涙が出なくなった?
➡イメージではなく、正解は…
一部は正しいけれど、これだけでは説明できない。
ドライアイの症状や原因は多種多彩。
ドライアイは”疾患”ではなく、奥が深い「症候群」なのです!
ドライアイの症状
イメージではない、症状は下記のとおりです。
・眼が疲れる
・眼が乾く
・見えづらい
・眼が痛い
・ごろごろする
・眼が開けにくい
・目やにが出る
・眼がかゆい
・眼が充血する
ドライアイには種類がある!
・涙液分泌低下型→涙液層の異常
・上皮水濡れ性低下型→涙液層の異常
・涙液蒸発亢進型→涙液層の異常
・涙液分布異常型→眼表面形状の異常
・眼瞼摩擦亢進型→眼瞼縁の異常
・上皮脆弱性型→角膜上皮の異常
一つ一つを詳しく見ていきましょう。
涙液分泌低下型
■特徴
・涙腺の組織破壊を伴います
・涙腺から眼表面の導涙障害があります
■原因
シェーグレン症候群、続発性シェーグレン症候群(関節リウマチ強比皮症、全身性エリテマトーデスなど…)
瘢痕性角膜上皮症(移植編片対宿主病)など…
上記以外は、加齢、炎症など非特異的なものがあります。
■対処
内服薬によって涙液分泌を減らせます。
■涙の分泌を減らす薬一覧
・向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬など)
・抗ヒスタミン薬
・消化器潰瘍治療薬
・利尿薬
・抗不整脈薬
・気管支拡張薬
■治療
主に点眼薬、場合により涙点プラグ(涙の排出口に栓を差し込む治療)です。
水濡れ性低下型
■特徴
涙が分泌されるが、角膜の上にうまく乗らない
→眼の表面が涙で覆われない状態のことです。
■治療
涙点閉鎖手術があります。
涙液蒸発亢進型
■特徴
通常、まばたきせずに眼を長時間開いていると、涙が目の表面から蒸発します。
その蒸発の進みが過剰になります。
■原因
マイボーム線の機能異常(マイボーム腺炎など)
※マイボーム腺とは、まぶたの裏側にあり、涙の油分を分泌する器官です。
涙液分布異常型
■特徴
眼の瞬き・閉眼の異常、眼表面の凹凸から涙液が不均一に目の表面に分布しているということ。涙液が行き渡らなかった部分がダメージを受けます。
■特徴を詳しく
▼瞬きの異常とは?
・顔面神経麻痺(ヘルペス感染、脳疾患など)
・瞬きの回数の低下(集中時など)
・眼瞼の変形
▼眼表面の凹凸とは
・結膜弛緩症
・翼状片
・結膜嚢胞
・結膜浮腫
・濾過胞
・コンタクトレンズ装用
・角膜手術 縫合後
これらの症状の写真などはご自身で検索してみてください。
眼瞼摩擦亢進型
■原因
まばたきするごとに目の表面を目の縁は摩擦が生じる。その摩擦が亢進すると起こる症状です。
・眼瞼内反
・眼瞼変形(外傷、手術後など)
・上輪部角膜上皮症
・結膜弛緩症
・LWE(リッド・ワイパー結膜上皮症)
・コンタクトレンズ装用に伴う上皮障害の一部
・巨大乳頭結膜炎
上皮脆弱性型
■特徴
涙は正常だけど…眼の表面(角膜上皮)が弱い状態のことです。
■原因
角膜知覚低下
■代表疾患
・三叉神経麻痺
・糖尿病
・レーシック術後
・NSAID
・β-ブロッカー
ドライアイの最も怖い合併症
角膜潰瘍
感染、外傷などにより 、角膜にただれを起こす状態のことです。
たとえ年中無菌室で過ごすことができたとしても…「栄養障害性角膜潰瘍」という無菌性のドライアイも存在し、誰でもかかる可能性があります。
ドライアイに関連する、知っておきたい目の病気
マイボーム線炎
マイボーム腺は涙の油分を分泌する器官で、それが炎症を起こす病気です。
■原因
涙液蒸発亢進型のドライアイ
■マイボーム腺合併症
慢性的な炎症を放置すると…
・角膜新生血管
・角膜潰瘍
・睫毛乱生(しょうもうらんせい)、眼瞼外反 など
■治療
主に薬物治療を行います。
例えば、このような薬・治療です。
抗菌薬点眼、抗菌薬軟膏、ステロイド点眼、抗菌薬の内服
保存的治療(温罨法、アイシャンプー)
上記に加え、ドライアイの治療を行います。
今回の講座のまとめ
1. ドライアイの症状は多彩です。
2. ドライアイの原因も多岐にわたります。
3. ドライアイの合併症で最も恐ろしいのは角膜潰瘍です。
4. マイボーム腺炎は、蒸発亢進型のドライアイが原因であり、非常に頻度が高いです。
5.マイボーム腺炎の放置は重篤な合併症(角膜潰瘍、血管新生、逆さまつ毛など)の原因となり得ます。