医療公開講座レポート
第106回 動機、息切れ、胸の痛み…それって年齢のせい?~弁膜症について~
概要
今回は、心臓弁膜症について解説しました。
症状は加齢によって起こる症状と似ているため病気と気づきにくい場合があるかもしれません。弁膜症について知ることで自分や家族間で予防していきましょう。
- 開催日:2022年12月27日
- 会場:春日部中央総合病院
- 登壇者:心臓血管外科 降籏 宏 医師
講座内容 要約
「弁膜症」とは?
全身に血液を送る役割の心臓には、血流が逆流しないように色々な弁がついています。
これらの弁が役割を果たさなくなったときに生じるものを弁膜症といいます。
弁の役割を果たさなくなったとき ①狭窄
弁が十分に開かないため血液が前に進みづらくなっている状態です。
弁の役割を果たさなくなったとき ②閉鎖不全
弁がうまく閉じなくなり血液が逆流してしまう状態です。
弁膜症が体に及ぼす影響
- ●右心房が逆流すると→血液が前に進みづらくなる・体がむくむ
- ●肺に水がたまると→呼吸が苦しくなる・息切れする
- ●弁の出口が狭くなると→十分な血流がない・胸痛・失神
65歳以上の方は注意!最近になってこんな症状はないでしょうか?
・今まで散歩で歩けていた距離の途中で立ち止まるようになった
・近所への買い物でも疲れるようになった
・掃除や洗濯などの家事で動悸や息切れをするようになった
・駅や自宅の階段を一度に昇れなくなった
・普段の生活やちょっとした運動で胸が痛くなる
・自分が知らない間に気を失ってしまったことがある
弁膜症の症状はいつ出始めるのか?
※弁が悪くなるとすぐに症状が出るわけではなく、弁膜症で心臓の筋肉がくたびれて症状が出る。
➡ 心臓がくたびれる前に治療を行うことが重要!
症状を感じたら、まずは健康診断を受けること
※なかでも聴診が最も重要
聴診でわかること→心音・心雑音
大動脈弁狭窄症について
弁膜症の種類として、心臓の左側の左心と大動脈の間にある大動脈弁が開かなくなる弁膜症のことを「大動脈弁狭窄症」といいます。
大動脈弁狭窄症の症状が出てからの寿命とは?
狭窄症になると、血流を送るために圧が必要になり、心臓が頑張らなければいけない状態になります。そうして心臓が疲れてしまったとき、胸痛・動悸・失神をしてしまう状態になるときがあります。グラフで見ると、症状が出てからの寿命がガクッと落ちる危険さがあります。
大動脈弁狭窄症になった人の怖い話
怖い話① 元気なのに重症だった・・・
・元気でピンピンしている人
・その人が健康診断で心雑音を指摘される。
・循環器内科で重症大動脈弁狭窄症として心臓血管外科外来を紹介された
怖い話② 何気ない生活のなかで突然発症・・・
・朝、受診しようとバスを待っていたところ、心肺停止。
・救急車で蘇生処置を行われながら病院へ搬送される。
・PCPS(経費的人工心肺装置)をつけて心停止のままだが意識が戻った。
・緊急で大動脈弁置換術が行われ、その後、患者は歩いて退院した。
怖い話③ 手術の前日に・・・
・重症大動脈弁置換術を翌日に控え入院中。
・夜、シャワーを浴びに行ったが、なかなか帰ってこなかった。
・心配になった看護師が様子を見に行くと、心肺停止して倒れていた。
・その後、蘇生措置を行ったが、助からなかった。
大動脈弁狭窄症の治療
※唯一の治療は外科的治療。薬では治りません。
外科的治療法
① 大動脈弁置換術
特徴:安定した成績がある。いずれの施設でも行うことができる。
近年は人工弁の性能が良くなってきているため、長持ちする
② 経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)
特徴:現時点では開胸大動脈弁置換術を行うことが難しい方、ハイリスクと考える方が対象となっている。
皆さまへ
健康診断で「心雑音がある」と言われたら、早めの受診をおすすめします。
参加者の声
- ・大動脈弁狭窄症で当院にお世話になっています。大変わかりやすく参考になりました。
ありがとうございました。(70代・女性)