下肢静脈瘤センター開設にあたり、センター長からのご挨拶
この度、イムス東京葛飾総合病院に下肢静脈瘤センターを開設する運びとなりました。私は前身の新葛飾病院より10年に渡り葛飾の地で下肢静脈瘤診療を行ってまいりました。
その中で多くの患者様に「葛飾にこんな良い病院があるなんて知らなかった」という声を聞いてまいりました。葛飾区広報誌を通して区内地区センターで10年の間に20回の講演会を開催して情報提供しておりましたが、未だ地域の皆様への周知が不足していると痛感しております。
下肢静脈瘤は何科を受診すれば良いのか?どこの病院で診療を行っているのか?こんな疑問にお応えすべく「下肢静脈瘤センター」を立ち上げるに至りました。
私はこの地で2000例の下肢静脈瘤手術を執刀し3000例の下肢静脈瘤手術に携わる中で、当院で診療を受けられた患者様から「あそこで手術をしてもらったら本当に良かったから、あなたもそこで治療を受けた方が良いよ」という人伝手で、下肢静脈瘤にお困りのご友人やご家族などへさらに多くの診療を行ってまいりました。
しかし昨今
下肢静脈瘤クリニックが乱立し経済的動機から手術適応のない下肢静脈瘤手術が行われたり、無知な医師による不適切な治療がなされたりしており、下肢静脈瘤血管内焼灼術実施委員会より実施医・指導医宛てに「適切な治療を行うように」という勧告がなされるという大変嘆かわしい事態になっております。
ホームページやチラシ・広告で情報が氾濫する中、下肢静脈瘤診療において安全で高度な治療が何なのか、それがどこで行われているのか患者様が判断する事が難しくなってきております。
この地で10年に渡り着実に実績を積み重ねてきたからこそ、当院が下肢静脈瘤診療においてどこよりも安全でかつ高度な医療を行っているという自負を持っております。
下肢静脈瘤でお困りの事があれば、安心して受診いただければ幸いに存じます。
※「下肢静脈瘤センター」は5階病棟個室になっております。その日ごとに部屋番号が変わることがあります。
企業側も安全かつ高度に、そして多くの症例の経験がある医師と施設にしか製品を案内販売しません。
何故ならば経験不足の医師や経済的動機のために不適切な治療が現在日本の下肢静脈瘤治療の現場において行われ、学会より各実施医・指導医に注意喚起がなされており、企業側も信頼できる・実績のある医師・医療機関にしか製品を案内していないからです。
当院は実績・信頼を企業に審査され葛飾区で唯一この接着材(Glue:グルー)を安全に使用できると判断された施設です。
昨年12月に日本でこの手術方法の保険認可が下りコロナ禍の中ようやくこの接着材が安定供給できるようになり、当院でも使用するに至りました。現在日本で認可の下りている接着材は日本メドトロニック社のVenaSeal(ヴェナシール)ただ一つで、当院ではこれを使用しております。
日本メドトロニック社より、VenaSeal(ヴェナシール)を用いた治療が100例を超えたため、その功績を讃えた盾が贈呈されました。
下肢静脈瘤
症状として足のこむら返り(つる)・むくむ・かゆくなる・ボコボコと浮き出ている・皮膚が厚く固くなっている・皮膚が黒ずむ(色素沈着)・潰瘍(一部の皮膚が剥げてしまう)が挙げられます。
一般的に進行性の病気で徐々に(数年~数十年)悪くなります。 命に関わるようなことや足が切断されるような事は通常ありません。 ストッキング・包帯による圧迫治療は効果的ですが永続的に行う事は重荷になります。 また飲み薬で治す事もできません。治療の選択肢の一つとして手術があります。
劣化した(逆流した)静脈を抜くわけでもなく(切る)、焼灼するわけでもなく(焼く)、接着剤でくっ付けて潰してしまう治療です。 針の穴からカテーテルを入れるところまでは焼灼術と同じですが、ここから接着剤を入れて静脈を押して前後方向に潰して固めてしまいます。 焼く時にはこの血管周囲に大量に痛み止めの注射薬を注入するために何度も針を刺す必要がありますが、この治療ではその必要がありません。 また焼灼術の術後に伴うヒリヒリ感やつっぱり感、神経障害などがありません。
劣化した(逆流した)静脈に針の穴からカテーテル(細長い筒状の医療器具)を挿入して高周波またはレーザーを出して焼灼する治療です。 針の穴から行いますので傷跡がほとんど残りませんが単独で行う事は少ないです。 血管内焼灼術のみであれば片足約15分で終了します。当院では高周波を使用しております。
焼灼術が困難な場合に行います。 股と膝にそれぞれ約2cmの切開を行い、劣化した静脈にワイヤーを挿入し綱引きのような形で引きずり出してくる手術方法です。 血管内焼灼術が行われる前は主流であり、非常に安全で確実な手術方法ですが、現在そのほとんどが上述した血管内焼灼術に取って変わられ、行われる事がほとんどなくなっています。 当院でも昨年1年間で0件でした。
ボコボコ浮き出た血管が小さい場合は上述した瘤切除を行わず硬化療法を行います。 硬化療法はフォーム剤(硬化剤+二酸化炭素を合わせた泡)を注射して浮き出た血管を固めてしまう治療です。 瘤が大きいと出来ないため小さいものやクモの巣状の血管が対象になります。
ボコボコ浮き出た血管を2~5mmの小さい傷口から取り除きます。 一般的に血管内焼灼術やストリッピング手術と合わせて行います。 当院では「切らない」ことにこだわっており、瘤切除を行う事はほとんどなくなっております。
血液が足にうっ滞しないように圧迫します。 通常のストッキングと異なりスパイラル構造をしており、足首側を強く圧迫し膝側の圧迫を軽くする事で圧力差を生み、静脈灌流を助ける働きがあります。 しかしながら静脈瘤そのものが治るわけではありません。 症状緩和や浮腫の軽減、再発予防に行われるため根治的な治療ではありません。
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、どの患者様にも傷口がない事がお分かりいただけるかと思います。切らない治療にこだわった結果です。
偶然にも術後1年後に撮影する機会のあった患者様に同意を得て、三次元 CT
を行いました。
CTでは皮膚の下の構造物を三次元化しているため、写真のよう
に は ごまかしが効きません。下肢静脈瘤がすっかりなくなり、治癒している事が
お分かりいただけます。
このような最重症の「下肢静脈瘤性皮膚潰瘍」の治療まで行っている施設は少なく、根気強く外来診察を重ね患者様と共に歩んできた結果です。