低侵襲手術センター 患者様への負担を軽くし早期社会復帰を可能にします。
脳神経血管内治療はカテーテルテクニックを用いて行う脳領域の低侵襲手術です。
最新の血管撮影装置を用いて様々な脳血管疾患を治療します。
利点 |
1,患者様への侵襲(負担)が少なく、 高齢者や合併症を持った方にも施行可能 2,治療後の入院期間が短い 3,外見上の傷が残らない |
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問題点 |
1,レントゲン透視下の手術なので脳血管損傷などのトラブルが起きた時、 対応が遅れて後遺症を残すことがある 2,血管の屈曲蛇行が強い場合は治療困難な場合がある |
脳は、3層の膜に覆われて頭蓋骨の中に入っています。 一番外側(頭蓋骨のすぐ内側)の膜である硬膜は、固有の動脈と静脈を持っています。 硬膜動静脈瘻は、硬膜の動脈と硬膜静脈洞が交通して動静脈が短絡された病気です。 硬膜動静脈瘻は稀に生まれつき存在していて子供に発症することもありますが、ほとんどは生まれてから何らかのきっかけで形成され、成人以降に発症します。 硬膜動静脈瘻は原因不明のことも多いですが、外傷、感染、手術などに関連して形成されるものもあります。 日本では年間に300〜400人しか発症しない珍しい病気です。
硬膜動静脈瘻の症状は、その発生部位と動静脈短絡を通って流れる血液の量や方向によって異なります。 例えば、拍動性の耳鳴りです。これは動静脈短絡を通る血流による音が、「シュッシュッ」「ザーザー」「ザクッザクッ」など、まさに心臓の鼓動に同期して聞こえます。 他には、眼球が突出したり、眼球結膜が充血したり、眼球運動障害(ものが2重に見える)があります。 重篤化すると失明する場合があります。どこの発生部位でも静脈洞がつまったり、狭くなったりしていると、脳の静脈に逆流して、脳の循環障害が起こります。 その症状は、意識障害、痙攣、麻痺、言語障害、高次機能障害、認知症などが起こり、ひどい場合には、脳内出血やくも膜下出血を発症します。
硬膜動静脈瘻の存在は、造影CTやMRI・MRAでほとんどの場合、確認できます。 確定診断のためには、脳血管撮影(カテーテルを用いた検査)が必要です。
脳出血・くも膜下出血、症状を呈する、脳の静脈へ逆流している場合は、治療適応となります。
無症状かつ脳の静脈へ動静脈短絡の血液が逆流していなければ治療適応外で定期的にMRI撮影を行い経過観察となります。
治療方法には、血管内治療、外科治療、放射線治療があります。
最近では血管内治療の進歩により、ほとんどの場合、血管内治療が第一選択で治療します。
血管内治療は、足の付け根の動脈または静脈から細いチューブ(マイクロカテーテル)を動静脈短絡に誘導して、短絡部を閉塞します。
閉塞させるために使われる塞栓物質は、コイルと呼ばれる金属がよく使われます。
承認された医師のみが使用可能と限定的ではありますが、非接着性の液体塞栓物質であるONYX(オニキス)が2018年に本邦で認可され根治率が向上し、今までの血管内治療では治療困難であった硬膜動静脈瘻が治療可能となっています。
治療に伴う主な合併症としては、脳梗塞や脳神経麻痺がありますが、脳血管解剖を分析することにより最小限にすることができます。
外科治療と放射線治療は、血管内治療単独では根治できない場合に考慮される治療法です。
硬膜動静脈瘻は珍しい病気であり、治療などについて不安や疑問が多くあると思います。 ほとんどが脳血管内治療(カテーテル治療)で治ります。当院では脳血管内治療外来を行っております。 脳血管内治療、その他の方法も含め、病態に合わせた最善の治療を提案いたします。まずは外来でご相談ください。
Fig.1
Fig.2
Fig.1 Onyx(オニキス)実施医プログラム認定証
Fig.2 左からOnyx18, Onyx34, DMSO
MICS CABG(狭心症 心筋梗塞に対する低侵襲冠動脈バイパス術)
冠動脈バイパス術は心臓の周りにある冠動脈という1〜2mmの血管に、体の他の部分の動脈または静脈を使用して迂回路(バイパス)を作る手術です。冠動脈に細いところがあっても、また閉塞していてもその先に十分な血液を流すことができ、弱った心臓の機能を守り、改善します。
以前は心臓を止めて人工心肺を使用したバイパス手術を行っていたのですが、2000年頃より人工心肺を使用しない、心臓が拍動(動いた)したままの状態でバイパス手術を行う方法(心拍動下バイパス術、オフポンプバイパス術、OPCAB:(off-pump
coronary artery bypass
surgery)が出てきました。この治療の利点は患者様の身体に対して低侵襲で、術後の回復も早いことです。しかし、動いている心臓の直径2㎜以下の冠動脈に新しい血管をつなぎますので、外科医には高度な技術と豊富な経験が必要とされます。院長の吉田はこの術式の日本の先駆者の一人で2,000例以上の心拍動下バイパス術を執刀し、その経験は世界的にも他の追随を許しません。低侵襲バイパス手術にも積極的に取り組んでおり、部分胸骨切開による心拍動下バイパス術の経験も豊富ですし、左胸部小切開による両側内胸動脈を用いた心拍動下バイパス術(MICS
CABG)は世界でも行っている施設は数施設しかございません。
MICS CABGでは胸骨を切開しませんので、術後の胸骨骨髄炎のリスクはありませんし、早期の社会復帰、早期の肉体労働、早期のゴルフなどの運動も可能です。当院のMICS
CABGは可能な限り全て動脈グラフトでの血行再建を目標としています。動脈グラフトは静脈グラフトより長期の開存が期待されます。我々は働き盛りで日々忙しい方々の現在の生活とともに、老後の豊かな生活も考えて手術をさせていただきます。
当院心臓血管外科チームは個々の患者様にあった世界最高水準の冠動脈バイパス術を提供致します。
MICS CABGの術中の様子とMICS CABGを受けた患者様の創
MICS CABGでの動脈グラフトを使用した完全血行再建
体に優しい低侵襲弁膜症手術
当院ではバイパス手術だけでなく、一定の条件を満たした弁膜症患者様に対しても積極的に低侵襲手術に取り組んでおります。
当院心臓血管外科チームは入念な準備のもと2013年から低侵襲弁膜症手術(MICS)を開始いたしました。
右胸部に4~7cmの小さな創で手術を行っております。
人工心肺は足の付け根の動静脈で確立します(場合によっては肩の動脈を使用する場合もあります)。
肋骨と肋骨の間から手術を行いますので、術後に痛みが出る場合がありますが麻酔科の心臓麻酔専門医師が痛み止めのカテーテルを挿入しますので、痛みが少なく体に負担がかかりません。
最短の患者様ですと、術後3日で退院された方もおられ、通常の心臓手術より早期に社会復帰が可能となります。
全身麻酔後に麻酔科医師が痛み止めのカテーテルを挿入します。(傍脊椎ブロック)
MICS MVP(右肋間開胸僧帽弁形成術)の様子
胸部・腹部大動脈瘤や急性大動脈解離に対して血管の内側から人工血管を挿入する手術です。
従来の手術法は胸骨正中切開や肋間開胸、腹部正中切開など大きく皮膚を切り開いて大動脈(瘤)に到達し血流を堰き止めて人工血管で取り換える手術を行っておりました。
このため患者の術後の負担が非常に大きいです。ステントグラフト内挿術では足の付け根を5cm切開して、その動脈から折り畳まれた人工血管を挿入し胸部・腹部大動脈瘤まで到達して広げます。
血管の内側に挿入するので人工血管を糸と針で縫い付けることができません。その代わり人工血管の両端に内張りのバネ状の金網が付いており、このバネ状の金網によって人工血管を大動脈に圧着して隙間がなくなる事で瘤に(血流の)圧力が掛からないようにして破裂を防ぎます。
非常に魅力的な手術方法ですが種々の制約があります。造影剤を使用するCT検査等を定期的に受ける必要がある事(腎機能障害の方には向かない治療)、瘤の形・場所・瘤に到達するまでの血管の性状などから困難な場合がある事、8年以上経過すると治療成績が人工血管置換術に比べて劣る事などが挙げられます。治療前に全身の検査を行い治療方法に関して良く検討することが肝要です。
☆当院は胸部ステントグラフト実施施設・腹部ステントグラフト実施施設に認定されております。
術前 術後
術前 術後
血液の流れる部分が狭くなったり(狭窄した)、流れなくなった(閉塞した)動脈に対して、小さい針の穴からカテーテルという細い管を入れて、風船で広げたり・ステント(内張り型の金網)を入れたりする治療です。
従来は狭窄部位や閉塞部位には全身麻酔で皮膚を切開して行う外科的手術が主流でしたが、治療器具の改良・技術の発展に伴い現在ではカテーテル治療で行う事が主流となっています。この治療は局所麻酔(意識がある)で行います。針の穴から様々な器械を入れて行う治療ですので傷跡が残りません。基本的に入院期間は1泊2日もしくは2泊3日となります。患者の負担が少ない治療となります。
とても魅力的な治療方法ですがいくつかの制約があります。特定の病変部位・形状においては長期的な成績(成功)が望めない事や抗血小板薬を1~2種類服用する必要がある事が挙げられます。
重要な事は個々の患者の種々の要因を検討してカテーテル治療が好ましいのか外科手術が好ましいのかを正しく判断できるかどうかです。カテーテル治療にのみ従事していた場合、外科手術の有用性を判断できずにカテーテル治療に固執してしまい長期的な改善が望めなくなってしまったり、逆に治療できないと諦められてしまったりする事があります。
また外科手術にだけ固執すると患者の負担が大きくなってしまう事があります。バランス良く治療するためには垣根のないチーム医療を行うか、単科でどちらの治療もできるかです。
当院心臓血管外科では単科で年間100件以上の血管内治療(カテーテル治療)を行い、加えて外科手術も年間80件以上行っておりバランスの取れた治療を行っております。血管内治療の良い部分・外科手術の良い部分を習熟しており患者の治療の選択肢が広がります。
シャント狭窄・閉塞に対する最も一般的な治療です。病変に対して小さい針の穴からカテーテルという細い管を入れて、風船で広げる治療です。日帰りかつ傷口がない治療です。
劣化した(逆流している)静脈の中に針の穴からカテーテル(細長い筒状の医療器具)を挿入して高周波やレーザーを出して悪くなった静脈の本幹を焼灼する治療です。
この治療自体は針の穴から行いますので傷跡が残りません。加えてコブコブした部分に関しては硬化フォーム剤(硬化剤+二酸化炭素を合わせた泡)を注射して固めたり、2~5mm程の傷口で取り除いたりします。
硬化フォーム剤のみで完遂した場合は全く傷跡が残らない治療になります。手術時間はおおよそ30分程の手術になります。
手術後は傷口からの出血がないか1時間弱 術後待機室にてお待ちいただき問題なければご帰宅となります。
当院は2次救急総合病院ですのでご帰宅後のトラブルも24時間365日対応しております。
入院設備も要しておりますので、何よりも安全に治療を受けていただけるものと考えております。
総合病院の強みを生かし下肢静脈瘤とは別の病気を抱えていらっしゃる方でも他科との診療連携のもと治療を行っております。
☆当院では高周波を用いております。
近年の医療技術の発展に伴って、患者様の手術後の日常生活の質を重視した治療が広まってきています。 低侵襲性を目指した腹腔鏡手術はそのような治療の一つですが、当院でも積極的に行っています。
腹腔鏡手術とは「腹腔鏡」というテレビカメラでお腹の中を観察しながら、お腹に数カ所あけた1センチほどの穴から鉗子(かんし)という長細い器械を使って行う手術のことです。 従来の「お腹を切る手術」は開腹手術と呼びますが、腹腔鏡手術は開腹術と比べて小さな傷で済むために患者様の術後の痛みが少ないことが一番の長所です。 また、お腹の中のほかの臓器、たとえば腸管などに与える影響が少ないために手術後の消化管の回復が早いといわれています。 従って手術後に早くから食事が食べられ、入院期間が短くなり社会復帰が早くできることなどの利点があります。
対象となる手術については、約20年前に始まり現在では標準手術となっている胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術、虫垂炎などの急性腹症や鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)といった良性の病気に対する手術だけではなく、胃がんや大腸がんといった消化器の悪性腫瘍に対する根治手術も積極的に行っています。
また、胃粘膜下腫瘍など局所切除が必要な場合に内視鏡医と外科医が共同で胃の内外から必要最小限の胃壁の部分切除を行うハイブリッド手術(LECS手術)にも積極的に取り組んでいます。
最新設備の整った腹腔鏡専用の手術室において開院直後より内視鏡外科技術認定医が着任し、本格的に取り組んでいます。