連携医療の取り組み「糖尿病」について
糖尿病はひとりひとりの方に個別の血糖コントロール管理目標値を設定して、治療の最適化を目指す時代になりました。当センターでは糖尿病専門医が管理栄養士や看護師、薬剤師等とチーム医療を構成しメディカルスタッフ全体として質の高い医療を提供します。また、かかりつけの先生と協力して診療を進める医療連携も積極的に推進してまいります。
糖尿病の日常診療のなかで通院が不規則になったり、通院しなくなったりする患者様をよく経験します。
このようなことはなぜ生じてくるのでしょうか?flying awayやdropoutの症例についてその原因を探ってみると医療に対するアクセスの問題が一番大きいと考えられます。限られた数の専門医あるいは専門診療施設ですべての糖尿病患者を効率的に教育し治療を継続することは不可能です。また専門医療機関には長期間未治療で放置されていた症例や血糖コントロール不良の合併症進展例が集中する傾向が強いといえます。従って、予約制を厳格に施行している施設では受診間隔が長くなり、そうでない施設では診察に至るまでの待ち時間が長いのみならず、受付から支払い終了までの在院時間が長時間になります。その結果として患者様の満足度は極めて低くなります。
多くの症例が長期にわたり継続的に専門医療機関を受診できる環境にはないといえます。
かかりつけ医からすると生活習慣に対する介入を効率的に行うには、その条件を整えることに人的リソースや費用に過大な負担が生じて実行することが困難な場合が多いようです。また、患者様からすると合併症を含めた精査や教育指導の質の面からは専門医療施設に期待するところが大きいといえます。
いわゆる医療機能の分担と、患者様の診療の流れを円滑にする地域糖尿病診療療システムが極めて大切と考えております。
当院の地域医療連携室にて受け入れを実施しております。お気軽に下記までご相談下さい。
図1 糖尿病医療連携イメージ図
専門医療機関はチーム医療のもとに、教育システムが完備されています。当該医療機関で糖尿病診療のリソースが不足している場合、一旦専門医療機関に初期教育や合併症精査について依頼することも一つの方法と考えられます。
図2「糖尿病医療連携システム」
専門医療機関だけで,自己完結的に糖尿病診療レベルを向上しようとしても限界があり,地域全体の糖尿病診療のレベルアップを図る必要があります。その実現のためには,地域医療システム,組織の構築と継続的な運用が重要と考えられます。
初期教育と平行して合併症の精査を施行し、透析が前提とならざるを得ない糖尿病腎症や増殖性網膜症の症例等高度の合併症を有する症例や血糖コントロールに困難を感じる症例はご相談させていただきますが、原則として全症例を紹介元であるかかりつけ医に返送いたします。
糖尿病の慢性管理が円滑にすすめられるためには医療機関に対するアクセスが良いことが必須の条件となりますが、かかりつけ医は受診回数まで含めて最適の受け皿機能を有しています。
コントロール悪化の場合の再教育,合併症が出現した場合の精密検査、合併症高度の場合の長期管理等はもちろん糖尿病昏睡、遷延する低血糖などの急性代謝失調の症例もご遠慮なくご相談ください。
当センターの糖尿病チーム医療
介入する患者数
入院患者 | 8件/月 |
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外来患者 | 836件/月 |
スタッフ数
日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)と日本糖尿病学会の研修指導医・専門医である貴田岡先生を中心とし、日本糖尿病学会 指導医2名、専門医3名を含む医師7名(非常勤3名を含む)と、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床検査技師、医療クラーク、総務課、医事課、地域連携室等で構成されています。
約20名
糖尿病教室
外来通院糖尿病患者さまへ糖尿病教室を実施しています。当院での糖尿病教室では、医師から糖尿病について、理学療法士から運動療法について、薬剤部から薬物療法について、検査科からSMBGについて、看護師からフットケアについて、栄養科から食事療法についての説明があります。多職種がそれぞれの領域の講義を行うことで慢性疾患である糖尿病患者の支援を行っています。特に運動療法は診療報酬上一部を除いて理学療法士からの個別の指導を行うことができないため貴重な講義の時間となっています。
詳細は③番カウンターにおたずね下さい。また、糖尿病教室の一部を動画として公開していますのでご利用ください。
糖尿病患者向けバイキング教室
糖尿病患者限定でバイキング教室を行っています。メニューを約20品考案し、そのメニューから患者本人が食べたいものを選び、選んだ内容からエネルギーを算出していただきます。患者自身がどのくらいのエネルギーを摂取しているか実感していただく教室となっています。教室の最後にレシピを配り自宅でも実践できるようにします。
今年度は2024年2月に開催を予定しております。
ノルディックウォーク、ウォークラリー
ノルディックウォークはインストラクターの資格を収得している理学療法士が主体となりけやき会主催のイベントとして参加者を募っています。ノルディックウォークとはノルディックポールを使うことで通常のウォーキングよりも腰や膝などに対する身体の負担が軽くなることに加え、手足を大きく動かすことにより消費エネルギーは高くなるウォーキング方法です。昼食を摂りながらの栄養講座も実施しています。
Covid19感染症の関係でノルディックウォークを実施できていませんが、2024年度再開予定です。
埼玉県糖尿病協会が企業(ノボノルディスクファーマ)と共催で行うウォークラリーにイムス三芳総合病院チームとして参加しています。スタッフと患者がチームを組み、公園内を歩きながらクイズやミニゲームを行う形式です。
2023年10月29日に実施され当院から患者3名、職員9名で参加しました。
SMBG精度管理
検査科が中心となりSMBGのメンテナンスを1年に1回行い、正常に作動するか、精度は正しいか確認しています。
メンテナンス時期は検査科が抽出して電子カルテ上に共有し医師、看護師が対象者にアナウンスして行っています。
タスク・シフトシェアの一例として
臨床検査技師が持続皮下グルコース測定器の装脱着を除いて使用方法の説明、検査データの解析を行い電子カルテ上で各スタッフが閲覧できるようなシステムを構築しています。そのデータを医師・管理栄養士が確認しそれぞれ診察や栄養相談に活用しています。
月に2回の委員会
当院では多職種からの意見を募り、よりよい医療の提供ができるよう月に2回の委員会を実施しています。
カンファレンス
教育入院中の患者様に薬物療法・食事療法について学んでいただき自宅でも実践できるよう多職種が関わり支援しています。
チームのここが自慢
医事課や地域連携室、総務課も参加することで、地域に寄り添った医療の提供を目指しています。
特に広く当院に興味を持っていただくべく、インターネットの活用を行っています。
糖尿病教室の内容を来院することができない患者様向けに動画視聴などができるサービスを提供しています。
これから目指していきたいこと・目標
日本糖尿病協会で推奨されているアドボカシー活動に尽力できるよう、スティグマをなくしていくこと、糖尿病患者が生活しやすい食事のアドバイスや薬物療法の選択を行っていきます。そのために様々な資料の作成や、患者様の生活背景に寄り添った医療の提携を目指していきます。
外来栄養指導
管理栄養士による「外来栄養指導」を行い、糖尿病患者さまの食事の勉強に対するサポートしています。
近隣医療機関にかかられている糖尿病患者さまを対象に、3回の指導で1セットの栄養指導を行います。
各プログラムは月1回ペースで受講いただけます。ご希望の方はかかりつけの先生にご相談ください。
プログラム① |
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プログラム② |
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プログラム③ | 外食および間食などの摂り方 |
また、来院せずに電話でも継続外来栄養指導が受けられます。ご希望の際はお申込み時にご相談下さい。
電話での指導の際は外来栄養指導の費用については銀行での振り込みが必要となります。
日時 | 月~金、土(午前) |
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所要時間 | 約30分 |
場所 | 1階 栄養指導室 |
費用 栄養指導料 |
プログラム① 260~780円 プログラム②・③ 200~600円(各回ごと) 保険の負担割合により多少費用は異なります。 |
持ち物 |
初回のみ簡単な診察がございます |
教育入院
当院では糖尿病教育(糖尿病に関する勉強や合併症検索)を2泊3日で実施しております。
ご希望の方はかかりつけの先生にご相談ください。
尚、実施した検査結果は紹介元の医院へ郵送させていただきます。
血糖コントロール(インスリン導入・内服薬調整など)も併せて実施を希望される方は10日から14日前後の入院期間が必要です。
糖尿病透析予防指導(個人指導)
予約制
糖尿病患者さまに対して、糖尿病への理解を深め、ご自分で対策をしやすくなる手助けとして、患者さま一人ひとりの病状や環境に合わせて「糖尿病透析予防指導」を行っております。
所要時間 約90分
ご希望される方は、まずはかかりつけ医にご相談ください。
指導者 | 指導内容 |
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看護師 | 糖尿病について |
管理栄養士 | 食事の摂り方について |
理学療法士 | 運動療法について |
フットケア外来
予約制
糖尿病の合併症に「神経障害」と「末梢血流障害」があります。
神経障害
足の感覚が鈍くなり、痛みを感じにくくなる状態のこと。
痛みを感じにくいため、足のケガやヤケドに気づかず、放置してしまうことも。
末梢血流障害
動脈硬化が進み、足の細胞に十分な酸素や栄養が行き届かなくなる状態のこと。
そのため、ケガやヤケドが治りにくくなってしまうことも。
「神経障害」や「末梢血流障害」のために、足の変化に気づくのが遅れたり、ケガなどがひどくなってしまったりすると、最悪の場合、足の切断に至るリスクがあります。
そのため、糖尿病患者さまは、足のケアに気を付けて頂く必要があるため、ご自分でフットケアができるようになるよう、指導を含めたフットケア外来を行っております。
所要時間 | 30分~60分 |
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外来日 | 〈毎月〉 第3木曜日 午前中 第4木曜日 午前中 |
糖尿病友の会について
当院では、糖尿病の患者の皆さんとそのご家族の方へ、「より充実した生活を送って欲しい」「病気に負けないで頑張って欲しい」という願いから、患者様や、医師や看護師、管理栄養士などの医療スタッフで作られている会「けやき会」を組織して活動しております。
ご興味のある方は詳しい資料をお渡しできますので、当院スタッフへお声かけください。
動画でみる糖尿病教室
知っておきたい「糖尿病の知識」をご自宅から観ることができる「糖尿病学習用動画」です。
いつでも、どこからでも自分の好きな時間に閲覧が可能ですので、ぜひご活用ください。
さらに詳しい内容や質問のある方は糖尿病教室のご参加をおすすめします。