甲状腺の病気は自覚症状がほとんどない潜在患者も含めると10人に1人が持っているといわれるほど、ありふれた疾患ですが、どのような病気かはあまり知られていません。それでは、どのような病気なのでしょうか?
甲状腺の働き
「甲状腺」とは、首の喉ぼとけのすぐ下にある小さな臓器です。「甲状腺」では、「甲状腺ホルモン」を分泌して、全身に届けています。「甲状腺ホルモン」は、「新陳代謝」を調節する役割があります。
私たちの体では「新陳代謝」により、脂肪などを燃やして活動するために必要なエネルギーを作り出したり、古くなった細胞を新しい細胞に置き替えたりすることで、体を成長させたり、機能を維持したりしています。
そのため、甲状腺疾患になると、「甲状腺ホルモン」がきちんと働かず、体にも異常が出てくる場合があります。
甲状腺の病気を疑われる症状
- 肌荒れ
- むくみ
- 月経不順
- 食べないのに太る
- 食べてもやせる
- イライラ
- 無気力
このような症状は甲状腺疾患が原因の可能性があります。甲状腺疾患かどうかは、血液検査や超音波断層検査などをすればわかります。
甲状腺の主な診断・検査方法
- 問診
- どのような症状があるのかの聞き取り
- 触診
- 実際に甲状腺を触り、大きさや硬さのチェック
- 血液検査
- 甲状腺ホルモンの量などが適正かを検査
- 超音波断層検査
- 甲状腺の大きさがどのくらいか、しこりがないかなどを診断
甲状腺の主な血液検査項目
主な検査項目は表のとおりです。こちらの数値を見て、どのような疾患に入るのかを判断いたします。
検査項目名 検査項目FT4(遊離サイロキシン)
甲状腺ホルモンの1つ。チロシン骨格にヨウ素分子が4つ結合。
〈高値の場合〉甲状腺機能亢進症
〈低値の場合〉甲状腺機能低下症
FT3(遊離トリヨードサイロニン)
甲状腺ホルモンの1つ。チロシン骨格にヨウ素分子が3つ結合している。活性が高いが、濃度は低い。
〈高値の場合〉甲状腺機能亢進症
〈低値の場合〉甲状腺機能低下症
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
甲状腺を刺激するホルモンのこと。甲状腺ホルモンの合成・分泌を調節し、濃度を一定に保つため、大脳の下に在る下垂体から分泌される。
〈血中の甲状腺ホルモンが高値の場合〉分泌が低下
〈血中の甲状腺ホルモンが低値の場合〉分泌が亢進
甲状腺の病気の2つの特徴
甲状腺の病気には「働き」と「形」の変化が関係しています。病気によっては、一方だけが現れるのではなく、両方に変化が出ることもあります。
1. 甲状腺の「働き」の変化(機能性疾患)
「甲状腺ホルモン」の分泌が不足したり過剰になったりすることによって出る甲状腺の病気のこと
ホルモンの過剰(甲状腺機能亢進症)、バセドウ病、無痛性甲状腺炎
甲状腺ホルモンの不足(甲状腺機能低下症)、橋本病など
研究・調査へのご協力のお願い
当院では、「厚生労働省」及び「国立研究開発法人 日本医療研究開発機構」の研究班が実施する『甲状腺クリーゼ:多施設前向きレジストリー研究』に協力しています。
研究によって得られた成果を、今後の病気の予防や診断・治療の向上に役立てたいと考えており、研究を進めるべく、初めて甲状腺クリーゼと診断された方について、調査を実施しています。ご理解・ご協力をお願い申し上げます。
詳細は、下記よりご確認ください。
2. 甲状腺の「形」の変化
腫瘍性疾患
「甲状腺」自体にシコリなどができたことによる甲状腺の病気のこと
良性疾患 | 腺腫、腺腫様甲状腺腫、のう胞など |
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悪性疾患 | 乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、低分化がんなど |
びまん性腫大
「甲状腺」全体が大きくなっていること。
バセドウ病、橋本病 など