甲状腺のしこり(腫瘍性疾患)

甲状腺のしこり(腫瘍性疾患)

甲状腺の「腫瘍性疾患」には他の臓器と同じように良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)があります。
近年、「人間ドックで受けた頸動脈エコーで甲状腺にしこり(腫瘍)があるといわれた」と、びっくりして受診される方が多いですが、これは超音波画像診断の進歩が大きく関係しています。

超音波画像診断の技術が発展した結果、5ミリ未満の小さな腫瘍まで認識できるようになったため、頸動脈エコーを受診する方の6~10%から腫瘍が見つかります。しかし、超音波画像から腫瘍の性質が識別可能であり、1センチ以下の腫瘍であれば穿刺吸引細胞診などの精密検査が必要なケースは稀ですから、検査で腫瘍があるといわれた場合は、一人で悩まず、まずはご相談ください。

ここでは「腫瘍性疾患」として、主な良性腫瘍と悪性腫瘍についてご紹介いたします。

主な良性腫瘍(良性腫瘍性疾患)

良性腫瘍の種類については下の表を参照して下さい。基本は経過観察で様子を見ますが、甲状腺ホルモン剤で小さくなることもあります。のう胞の場合は、穿刺吸引が可能です。4~5センチを超えた場合は、圧迫感や美容上の問題になるため、手術で取り除きます。

結節性甲状腺腫の種類

腺腫 薄皮に包まれた塊状のしこりが1つできる
腺腫様甲状腺腫 ブドウの房のようにしこりが複数できる
のう胞 しこりの中身が液体のもの

主な悪性腫瘍(悪性腫瘍性疾患)

悪性腫瘍といいますが、割合を見ると乳頭がんが約85%、濾胞がんが約10%と進行が穏やかで、性質が大人しいがんが占めています。どちらも5~10年かけてゆっくり進行し、リンパ説や他の臓器に転移する前に手術すれば完治が見込めます。

乳頭がんと濾胞がんに対して行う治療は、放射性ヨウ素内用療法等を併用することがあります。

未分化がんは発生頻度は1%とごく稀ですが、極めてたちの悪いがんのため注意が必要です。未分化がんに対して行う治療は、抗がん剤(分子標的薬)治療を行いますが、寛解は難しいがんです。

主な悪性腫瘍の種類

乳頭がん 甲状腺の濾胞細胞にできるがん。組織が乳頭状に成長する。性質は大人しい。30代の若い年代にも発症例が多い。
濾胞がん 同じく濾胞細胞にできる。他の臓器に転移しやすい。性質は大人しい。
髄様がん 甲状腺のC細胞にできる珍しいがん。性質は比較的大人しい。
未分化がん 未熟な細胞のがんなので、進行が早く極めてたちが悪い。
低分化がん 未分化がんほどではないが、たちの悪いがん。
リンパ腫 進行が早いが、化学療法が有効なものが多い。

びまん性腫大

バセドウ病や橋本病は「甲状腺」全体が大きくなる「びまん性腫大」も併発している場合がほとんどです。

単純性びまん症甲状腺腫

首全体が腫れるが、ほとんどの場合、痛みもなく自然に治ることがほとんど。