泌尿器科

当科について

質の高い泌尿器科地域医療の提供により、地域社会に貢献することを使命としてスタッフは日々研鑽に励んでいます。

常勤医師3名全員日本泌尿器科学会認定専門医であり、泌尿器科全般に対応可能です。特に尿路結石分野では難治症例に関しても高度な技術を駆使して治療成績良好であり、豊富な治療経験を有しております。

泌尿器がん分野では、早期がんから進行がんまで標準的な治療に心掛け、患者さまの状況に即した検査・手術・放射線治療・化学療法・緩和療法などをきめ細かく的確に行います。高度医療に関してはグループ内関連病院や大学病院等の高次機能を有する施設と連携して対応します。

排尿障害に関しては行動療法、薬物治療、低侵襲治療(WAVE等)および手術を駆使して有効で安全な治療を実施します。

女性の骨盤臓器脱に対して、腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)を実施しています。

主な対象疾患

当科は「3つの柱」の治療、すなわち①尿路結石症(腎・尿管・膀胱)、②男性の前立腺肥大症を中心とした排尿障害、③女性の骨盤臓器脱、腹圧性尿失禁に特に力を入れております。
膀胱炎や前立腺炎さらには性感染症として尿道炎などの感染症治療、男性更年期障害(LOH症候群)や勃起不全に対するアンドロゲン補充療法(ART)、その他薬物治療を実施しています。
泌尿器科がん(前立腺癌、膀胱癌、上部尿路上皮癌、腎細胞癌、精巣癌、陰茎癌)に対しては診断から治療(手術、化学療法、放射線治療)さらには緩和ケアまであらゆるステージに適切に対応いたします。
現在わが国は超高齢化社会を迎えていますが、泌尿器科疾患を抱えた高齢患者さまには治療のみならず生活面を含めたケアについて、当院総力を挙げた多職種連携により患者さま・家族と寄り添い、適切な方向性を模索していきます。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は癌のように命に係わる病気ではありませんが、重症になると行動療法や内服治療の効果が十分に期待できなくなり、この場合手術を検討することになります。当科では以前より実施していた経尿道的前立腺切除術(TUR-P)に加えて以下の術式を導入して患者さまそれぞれに有効でかつ安全な手術を選択していきます。

当院で行っている治療方法

ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)は肥大した前立腺を内視鏡的に高周波電気メスを用いて「削る」方法であったのに対して、同じく内視鏡的手術でありながらホルミウムレーザーを用いて前立腺種を「くり抜き」ます(下記図参照)。レーザーの特性から出血が少なく周辺組織への影響も少ないので、術中患者さまへの負担が少なく、術後に起こる副作用のリスクが低減されるなどのメリットが報告されています。

治療方法

前立腺の肥大した内腺と外腺
の境界にレーザーを照射して
内腺を外腺からくり抜きます。

くり抜いた内腺を広い膀胱内に
移動させ細切吸引機(モーセレーター)
で体外に摘出します。

前立腺水蒸気(WAVE)治療 前立腺肥大症に対する低侵襲手術

多くの併存症を抱える高齢前立腺肥大症患者さまは手術のリスクが高くなるため、症状改善が不十分な状態にも関わらず長期に薬物療法継続を余儀なくされていました。本治療は2022年9月、低侵襲治療として保険適用となった新しい前立腺肥大症治療です。内視鏡下で前立腺に刺入した針から高温の水蒸気を注入し腫大した前立腺を壊死、退縮させる治療で、治療時間(10分程度)、入院期間(1-2日)とも従来の手術より大幅に短縮されました。この治療の立ち位置は薬物治療と手術の中間に位置しますが、良好な治療効果および安全性が確認されています。

検査

前立腺癌診断

MRI-超音波融合画像による前立腺生検 前立腺癌に対する高精度の生体組織検査

前立腺がん検診等でPSA高値等を指摘され「前立腺癌疑い」とされた患者さまに対して診断を確定するためには前立腺生検検査が必要です。前立腺生検では的確な検体採取が困難な場合や出血・感染等の合併症を来す場合があります。これらの問題を解消するため当科ではでは富士フィルム社製ARIETTA70を導入し、1泊2日の入院で全身麻酔下に癌が疑われる部位への標的生検と前立腺全域への飽和生検を組み合わせて安全で効果的な前立腺生検を実施しています(下記図参照)。

検査

MRIやCTの画像とエコーの画像を融合

MRIでターゲットを指定し、
エコーで同じ場所を生検できる

尿路結石症

腎臓で作られた尿は尿路(上部:腎、尿管、下部:膀胱、尿道)を下降して体外に排出されます。尿路に発生する結石を尿路結石症と呼びます。ちなみにその他人体には胆道結石、膵石、唾石、耳石等の結石を生じることが知られています。癌のような致命的な疾患ではありませんが下記のような厄介な症状が認められます。

痛み:側腹部痛(一般的に片側)を生じます。疝痛(せんつう)発作の際には救急車を要請せざるを得ないことがあります。

発熱:感染症を併発し結石性腎盂腎炎に至ると、高齢者や併存症を有する方では重篤化するリスクがあり、入院が必要になることが少なくありません。

腎機能低下:尿流が妨げられた側の腎機能が低下します。同時に両側の結石が詰まると急性腎後性腎不全(嘔吐や浮腫み)を来し、緊急処置を要することがあります。

再発:カルシウム結石では自排または治療により結石がいったん消失しても、5年間で半分くらいの割合で再発することが知られています。

男性の7人に1人、女性の15人に1日が一生のうちに尿路結石症に罹患することが知られており頻度が高い疾患です。
原因は不明なことが多いのですが、がん等と同じように遺伝的要因と環境的要因の両方が関わっています。結石分析を含む検査所見と詳細な病歴聴取が鍵になります。

軽症例では排尿により自然に排出(自排)が期待できこの場合は保存的治療のみで解決しますが、結石の大きさ位置により自排困難な重症例に対して、当科では積極的に以下の治療を行い良好な成績をあげています。

当院で行っている治療方法

尿路内視鏡手術(URS)

尿管鏡、腎盂鏡等の様々な内視鏡を配備し、砕石装置としてホルミウムヤグレーザー:エダップ社製Cyber Hoが稼働しています。下記図の通り、件数の多いTULとPNLさらに両者を併用したECIRSなど難度の高い手術も実施しています。TULは全身麻酔下通常3泊4日入院(クリニカルパス適用)で実施しています。

経尿道的尿管砕石術(TUL)

経皮的腎砕石術(PNL)

検査
検査

尿失禁、女性泌尿器科

尿失禁では問診、アンケート、排尿日記や排尿機能検査でそのタイプを診断し、腹圧性尿失禁の場合は軽症では骨盤底筋体操による理学療法を勧め、中等度以上なら短期入院での尿道吊り上げ手術(TVT)を行います。過活動膀胱を伴う切迫性尿失禁にはまず投薬と生活指導を行い改善しない場合はボトックス膀胱壁内注入療法を行います。

頻尿、尿意切迫感と慢性的な膀胱痛を伴う膀胱痛症候群には生活指導、薬物療法を基本としこれらの中で間質性膀胱炎には水圧拡張術や内視鏡手術を行います。また膀胱瘤などの骨盤臓器脱に対しては腹腔鏡によるメッシュ手術(腹腔鏡下仙骨膣固定術)を実施します。

当院で行っている治療方法

TVT手術 腹圧性尿失禁に対する尿道下メッシュテープ支持手術

行動療法や内服治療等で十分な効果が得られない腹圧性尿失禁に対しての手術的治療として実施します。膣の前壁の尿道中央下面に幅8mm程のメッシュテープを敷き、テープの両端は恥骨裏面に置く1時間程度の手術で、傷は膣前壁2cm程度です。治療成功率は90%以上です。

検査

尿道つり上げ術(TVT)は腹圧性尿失禁に対する手術です。
経腟的に尿道中部の下方を通してテープを恥骨上から尿道を支えるように挿入します。

ボトックス膀胱壁内注入療法 難治性切迫性尿失禁の新しい治療

過活動膀胱を伴う切迫性尿失禁に対して行動療法や薬物療法の効果が十分に得られなかった場合、ボトックス膀胱壁内注入療法を考慮します。全身麻酔は必要なく、15分間膀胱内に局所麻酔を入れての30分程度の治療で1泊2日または日帰りで可能です。治療効果は数日後から認められ、個人差はありますが、平均で4~8か月間持続します。

検査

ボトックス膀胱壁内注入療法とは、A型ボツリヌストキシンという薬を内視鏡下に膀胱壁の多数箇所に少量ずつ注入することで膀胱の過剰な収縮反応を抑える治療です。

腹腔鏡下仙骨膣固定術 骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下のメッシュ手術

骨盤臓器脱を根治させることを目的とした腹腔鏡によるメッシュ手術です。腹腔内から膣壁と膀胱や直腸との間にメッシュを敷く手術で使用メッシュ量は少なく、本来の位置に近くに固定され、術後の違和感や疼痛が少なく、再発率も低く治療成績は良好です。全身麻酔下で4-5日の入院で実施します。

検査

腹腔鏡下仙骨膣固定術は骨盤臓器脱を腹腔鏡下に修復する手術です。
カメラ用と操作鉗子用の計4つの腹部の穴から膣壁の前後に敷いたメッシュで下垂した膀胱や子宮を仙骨前面に引き上げる手術です。

その他の泌尿器科疾患

以上明理会中央総合病院泌尿器科として特色ある治療について記載しましたが、当科の最も強みとするところはあらゆる分野の泌尿器科疾患に初期対応可能なことです。現時点で最適な医療を近隣地域で実施できるように近隣施設との医療連携を積極的に実施しています。したがって当院の外来を受診された患者さまには経験豊富な3名の泌尿器科専門医の診察により、最善・最新の泌尿器科医療が提供されることになります。

診療実績

泌尿器科手術件数(2024年)

悪性腫瘍根治手術(開腹) 0件
経尿道的水蒸気治療(WAVE) 14件
経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS) 1件
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt) 39件
尿管鏡検査 1件
軟性鏡による経尿道的腎尿管結石除去術
(f-TUL)
35件
硬性鏡による経尿道的腎尿管結石除去術
(r-TUL)
12件
経皮的腎結石除去術(PNL) 3件
経皮的腎瘻造設術 6件
尿管ステント留置術 10件
経尿道的膀胱結石除去術 4件
生理食塩水灌流経尿道的前立腺切除術
(TUR-P)
5件
ホルミウムヤグレーザー前立腺核出術
(HoLEP)
7件
尿道ステント(メモカス) 2件
腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC) 7件
ボツリヌス毒素膀胱内注入療法 9件
MRI-TRUS融合画像ガイド下経会陰式前立腺針生検 59件
その他手術を含めた総件数 227件

お知らせ

15歳未満の小児患者さまの外来診療を承りますが、入院手術が必要な患者さまに関しては現在当院で小児病棟が運用されていないため、外来診療のうえ当科から小児泌尿器科領域疾患について治療経験豊富な施設を紹介し、適切な治療をお受けいただきます。

患者さまへのメッセージ

地元診療所・病院の先生方との密接な医療連携を構築し、地域住民の皆様に効率良い医療を提供したいと考えています。

笑顔とともに「お大事に」「ありがとうございました」の言葉が行き交う医療現場で、患者さまとの信頼関係に根ざした医療を提供し続けたいと願っています。

医師紹介

吉川 哲夫
泌尿器科部長吉川 哲夫
専門分野
  • 泌尿器科全般、特に尿路結石症
  • レーザー医学
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医
  • 日本腎臓学会 腎臓専門医
柳澤 良三
柳澤 良三
専門分野
  • 前立腺肥大症・癌
  • 過活動膀胱(頻尿、尿失禁)
  • 神経因性膀胱
  • 尿路結石
  • 骨盤臓器脱
  • 泌尿器科系癌(腎癌、膀胱癌、精巣腫瘍)
専門医認定/資格等
  • 医学博士
  • 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医
  • 日本女性骨盤底学会
  • 日本泌尿器内視鏡ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
  • 日本排尿機能学会認定医
  • 2013年 西日本泌尿器科学会 重松賞

女性のための骨盤底筋体操について

松本 哲平
松本 哲平
専門分野
  • 泌尿器科全般
専門医認定/資格等
  • 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医
  • 日本透析医学会専門医